養豚経営情報
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子豚のような好奇心と行動力、そして成長力を目指しています。こぶたの学校長・纐纈雄三
寄生虫による病気
SECTION IV: 寄生虫による病気
家畜疾病図鑑に記載なし。下線部分をクリックすると米国アイオワ州立大学のHPで詳細がでます。アイオワ州立大学のHPにあるものは(米国ア)と表示しました。米国養豚獣医師会のものは会員でないと閲覧できないので、割愛しました。表記順は英名:和名;発病しやすい豚;特徴的症状;届出伝染病(届出)か法定伝染病(法定)か人畜共通伝染病(人畜共通)であれば表記しました。
Coccidiosis: コクシジウム病(米国ア);全年齢、主に哺乳豚と離乳豚で下痢(黄色、粘状から水様性)、脱水から発育不全。主に2種あり:C. suis とEimeria。C. suisは5日齢以上で下痢発症。第1波は5-6日齢でおこり、2波はその後4-8日後におこる。大腸菌症とよく間違われる。Eimeriaは1-3か月齢の子豚で発症し持続する下痢。
Control: 分娩グループに空白期間を作り、分娩クレート・設備の徹底したそうじ・水洗・消毒・乾燥。水洗・乾燥後に強い漂白剤やアンモニア水製品を使用、スチーム洗浄も使用。表面にペンキ塗装や水性シーラントもよい。長期的には洗浄しやすく、表面に微生物が残りにくい分娩クレート・設備が必要。米国では、分娩後1-2日の哺乳子豚にトリトラズリル剤投与が本病の被害を少なくするために使用されている。Eimeriaは、コクシジウムで汚染された環境に、感受性のある豚を導入することで発症することが多い。嚢胞の量を最小限にするための豚グループの空白期間での徹底的なそうじ・水洗・消毒・乾燥が大切。Eimeriaによる集団発生時には、アンプロリウム剤は効果あり。ただしC. suisには効かない。
追加2023/5)なお米国ではトリトノズリルは豚では認可されていませんのでオフレベル使用です。米国ではホワイトウォッシュ法(消石灰を散布し、クレートや子豚が触れるすべての場所をコーティングすること)がよく使用されるようになっています。著しい増体量の減少(例、離乳時で0.4から0.8キロ少ない)を引き起こします。腸の細胞が破壊され、他の腸内細菌やウイルスの病原体が腸の内壁に侵入するため、二次感染の可能性があります。これらの二次感染は、死亡率を上げる可能性が高くなります。
Cysticercosis:条虫病(サナダムシ);全年齢、アジア、中南米に常在、欧州北米ではほぼ根絶。豚の筋肉中に嚢虫(のうちゅう)を形成し、それを人が食べて感染。感染した人の糞便から豚に感染、豚では無症状が多い、屠場の検査で嚢虫が臓器で発見。
Control:糞便検査で発見、駆虫剤アルベンダゾールやプラジクアンテルで駆虫できる。予防は、人の下水や消毒していない表流水と豚の接触を避ける。放牧豚の感染リスクは高い。;人畜共通。アイオワ州立大学獣医学部の病気リストのサイトに記載されていない。東京都のwebに公衆衛生関係で記載。
Lice:しらみ(米国ア);全年齢、かゆみ、豚にのみ感染、疥癬とよく同時に発生。
Control:駆虫剤あり、駆除プログラムとして、導入豚の隔離期間中に18-21日間隔で2回の駆虫剤投与。注射用イベリメクチンは有効。なお駆虫剤によって休薬期間があるものがあり。
Lungworm: 肺線虫(米国ア);全年齢、主に6週齢以上の豚、とくに放牧養豚で発生しやすい;セキ、発育不良。
Control:放牧は大きなリスク。放牧地の循環。分娩前の母豚と放牧地への移動前の駆虫。
Mange: 疥癬(ダニ;米国ア);全年齢、哺乳豚で始めはわからない。かゆみで豚がこするため器具や設備がツルツルになる、発育不良で飼料要求率の悪化、母豚の繁殖成績不良、世界中に存在。
Control:駆虫剤あり、農場全体の駆除プログラムとして、哺乳豚に感染するので、まず繁殖群から始める。妊娠豚が分娩舎に移動する2-3日前に殺ダニ剤スプレー散布またはイベルメクチンを注射する。そして、8-10週齢の肥育豚にも駆虫が必要。
疥癬を根絶するには以下の順番に実施する。1)重度感染している母豚を淘汰する、2)そしてすぐイベルメクチンを18-21日間隔で2回、すべての豚(成豚、新生豚、肥育豚)に注射する、3)注射と同時に敷ワラなど除去、全施設の表面に殺ダニ剤を散布、4)疥癬が再侵入しないようなバイオセキュリティを実施。根絶は、ほとんどの農場で可能。なお多くの駆虫剤があるが休薬期間のあるものがあるので注意。
Roundworm: 回虫(米国ア);全年齢、主に肥育豚、発育不良、呼吸器症状。経済的に最も重要な寄生虫。世界中で発生。
Control: 駆虫剤あり。農場別の駆虫プログラム要。管理の変化や時間の経過で状況が変わるので、定期的モニタリング要。根絶が難しい。駆虫プログラム例:1)分娩1週間前に駆虫剤投与、2)分娩舎に移動する前に母豚を洗う、3)2-4週齢で離乳(回虫の卵が感染性を持つ前)、4)すのこ床(豚と糞の接触を減らす)、5)オールイン・オールアウトで豚舎の空白期間中のそうじ・水洗・消毒・乾燥の徹底。
回虫で汚染されている農場に、新しい豚を導入した場合は、多くの虫卵を摂取して肺炎を起こす。そういう場合は、初めの30日間は駆虫剤(例、ピランテル)を投与し、さらに8-10週間隔で駆虫剤を投与すべき。放牧を含む農場では、クリーンな放牧場に移動させる前に駆虫すべき。牧草地を循環させ、耕起が必要。
Toxoplamosis: トキソプラズマ症;汚染された水や飼料から感染、とくにネコが糞中にオーシストを排出。発熱、下痢、呼吸困難、妊娠豚では死産子豚や流産が増える。妊婦で流産・死産のリスク、胎児にも感染リスク。
Control: 急性増殖期の原虫に対してサルファ剤とピリメタミンが有効とされている。ネコを豚舎に近づけない。届出;人畜共通。アイオワ州立大学のHPに記載なし。
Trichinellosis:トリヒナ症(米国ア);豚では無症状だが、筋肉内に被嚢幼虫、人への感染が大きな危惧、イノシシ、熊など野生動物の生肉食がリスク。米国ではほぼ発症していない。リンクは東京都食品衛生のweb。
Control: 駆虫剤あり。米国では消費者への加熱するという教育プログラムを実施。農場では感染源との接触を断つ。; 人畜共通。
Whipworm: 鞭虫(米国ア);全年齢、主に12か月齢以内の豚、貧血、発育不良、下痢、豚とイノシシ、人にも感染。全世界で発生。放牧に多い。
Control: 汚染された放牧場への放牧はやめる。放牧場を耕起して卵を減らす。分娩2-3週間前と放牧場に移動する前に駆虫剤投与。放牧場でなく豚舎での飼育すれば静圧できる。
以下米国ではマイナーな線虫4種
Kidney worm:腎虫(米国ア);全年齢と胎子、発育不良、屠場での肝臓廃棄、豚のみ。
Control:分娩2-3週間前の駆虫剤投与で子宮内感染を防ぐ。米国では若雌種豚を初産後に淘汰することで、虫卵が尿にでてくる前に淘汰することで感染を防ぐ方法も実施されている。この方法で根絶した農場もある。放牧豚では飼料槽や飲水器をコンクリート床で日当りの良い乾燥した場所に置くこともよい。
Nodular worm: 腸結節虫(米国ア);全年齢、主に3か月齢以上、放牧で多い、発育不良;豚や牛や羊。
Control: 分娩前の駆虫剤投与で母乳豚への感染を減らす。放牧地の循環、休放牧地はよく耕起する。
Thorny-headed worm: 鉤頭虫(米国ア);肥育豚、放牧豚で多い、発育不良。
Control: 汚染された放牧地を避け、中間宿主である甲虫を給餌場付近から根絶。データは少ないが、駆虫剤レバミゾールが推奨されている。
Thread worm: ギョウ虫(米国ア);全年齢と胎子、主に哺乳豚、放牧で多い、発育不良。
Control: 放牧をやめ、豚舎内での飼育と高い衛生状態は感染リスクを下げる。イベリメクチンを分娩2-3週間前に投与することで、胎子への感染を防げる。