top of page

健康

  • ​病気の分類

  • 米国における群健康管理上の戦略的アプローチ

  • 農場の健康状態を改善するための農場でのアプローチ

  • 農場から病原体を排除するアプローチ

  • 群閉鎖(Herd closure)の手順

  • ​全淘汰・全入れ替え法の手順

  • ​PRRS被害排除のためのMcREBEL法

  • ​米国流の豚舎のそうじ・散水・洗剤で水洗・乾燥・消毒・乾燥

  • 悪癖:尾かじり・耳かじりなどへの対策

  • 分娩​母豚の子豚噛みつき

  • ​バッチ分娩の実

  • ​米国流バッチ分

  • ​欧州流バッチ分娩

  • ​離乳・肥育期の生存率を上げる健康管理見直し戦略例

  • エピソード:農場での豚インフルエンザへの注意点

  • ワクチン冷蔵庫保存時と運搬ワクチンの農場での受け取り注意点

「病気は王様だ」

 この名言は、米国ミネソタ大学のDr. Gary Dialと米国大手養豚企業New Fashion PorkのCEO Dr. Brad Frekingの若い時代に語られました。病気、特に感染症はいったん発生すると、急場となり優先順位がトップに来ます。タブの各病気の項も参照してください。なお病気は感染症だけではありません。タブの「上記以外の病気」も参照してください。

 病気は増える経費と繁殖農場と肥育農場からの収益の悪化の両方によって、農場の利益を減らします。病気によって、繁殖農場では死亡子豚と母豚死亡率の増加、非生産日数の増加と産子数の減少、そして子豚の体重が軽くなってしまいます。

 肥育豚の病気では、死亡率が増え、治療や予防のための医薬品や獣医師のコストが増加することで、利益が減少します。さらに肥育豚の病気は、急性の病気が発生している豚と慢性の病気をもつ豚の両方の飼料要求率の悪化、日平均の飼料摂取量減少から増体キロ当たりの飼料コストが増加します。日当り増体量の減少と飼料要求率悪化は、出荷豚当り施設コスト、資本コストと光熱コストを増加させます。

 

 出荷豚当り労働コストと繁殖コストは、死亡率が高い農場では高くなります。なぜなら、病気から生き残った少数の豚には高い固定費がかかることになります。また病気のコストとして、と体の品質が落ち、屠場での廃棄ロスが増えます。

 

 病気で失われる収益と増えるコストから、生産者にとっては病気の拡散を防ぐための群健康管理プログラムを実施する十分な理由があります。生産者がリーズナブルな費用で病気を、とくに経済的に大きい問題のある病気を撲滅することは大きな意味があります。最近では、そういった病気の制御や撲滅が可能になっています。

豚の病気一覧

 米国養豚獣医師会の豚病マニュアルに示されている病気順に一覧化しました。説明が多くなりすぎないように、英名:和名;発病しやすい豚;特徴的症状;届出伝染病(届出)か法定伝染病(法定)であれは表記;人畜共通伝染病(人畜共通)であれば表記しました。和名は日本の動物衛生研究所の和文サイトにあるものを、なければ著者が訳し仮名としました。どなたかご存じのかた、ご連絡お待ちしています。

 さらに詳しく知れるように日本の動物衛生研究所の和文サイト、ない場合は米国アイオワ州立大学獣医学部の英文サイトを掲載しました。米国養豚獣医師会の豚病マニュアルのサイトは、米国養豚獣医師メンバーのみ閲覧可能なので使用しませんでした。

​サブセクションで様々な病気を以下6つに分類しました。

1)細菌とマイコプラズマおよびスピロヘータによる病気

2)ウイルスによる病気

3)新興ウイルス病

4)寄生虫による病気

5)上記にはあてまらない病気

6)栄養欠乏症と過多症、カビ毒素と食中毒

有用サイト紹介

家畜疾病図鑑by農研機構

アイオワ州立大学の養豚の病気web-site

米国養豚獣医師協会の養豚の病気web-site​ (会員だけの可能性あり)

 

米国ミネソタ大学獣医学部電子図書館e-book by Dr. Perle Zhitnitskiy for CVM 6969: Large Animal Medicine III、写真も掲載されているのが魅力です。獣医学生への補助教材として開発されています。33の病気が載っています。病気の分け方がアイオワ州立大学と少し違います。胃潰瘍が下痢に入っています。豚丹毒が繁殖に入っています。下痢を哺乳豚と離乳豚に分けています。

https://open.lib.umn.edu/swinedisease/front-matter/introduction/

米国における群健康管理上の戦略

 

A.農場の健康状態を改善するための農場でのアプローチ

 

  • オールイン・オールアウト生産(All-in/All-out Production System):分娩舎、離乳舎、肥育舎で、飼育グループ毎に、飼育室や豚舎または農場ごとに豚を一度に入れ(イン)、一度に移動させる(アウト)生産方式です。アウトと次のインの間に、空白期間があるのでそうじ・水洗・乾燥・消毒を何回か繰り返すことができ、疾病感染と発生のリスクを低減できるのです。病気の完全排除はできなくても、肥育成績が飛躍的によくなります。米国では、この生産ができない農場は、将来的に生き残れないと言われています。

  • バッチ分娩 (Batch farrowing): グループ生産(Group production system)の一つ。オールイン・オールアウトの流れを作るために、グループを作る必要があります。例えば繁殖雌豚で毎週木曜日に離乳して、次の月曜からの週で種付けした雌豚群で、1週間ごとに21グループをつくります。この場合は1週ごとのグループ(バッチ)で、動物を動かすのです。グループで離乳させた1グループとして、室ごと豚舎ごとのオールイン・オールアウトで生産します。しかし小規模農場では、1週間のグループの豚数が少なさすぎる場合に、2週間ごとで10グループ(2-10システム)、3週間ごとなら7グループ(3-7システム)などの方法もあります。そのグループ毎に繁殖雌豚群を管理するのです。

 

  • SEWシステム(早期離乳・分離飼育法:Segregated Early weaning System):初乳から得られた移行抗体が感染防御可能なレベルの間(感染症によって違うが21日以下)に子豚を離乳し、母豚からの垂直感染を防ぐために、分娩された農場から離して飼育する方法です。マルチサイト生産、オールイン・オールアウト生産を併用することで、さらに疾病感染のリスクを低減できます。萎縮性鼻炎やオーエスキー病のコントロールや肺炎による呼吸器症状の軽減に有効であるとして、米国で2000年まで多く使われたシステム。なお米国ではほぼ萎縮性鼻炎とオーエスキー病が制御できたことで、SEWを使用する農場は減少し、平均の授乳期間は伸びています。

  • マルチサイト生産(Multiple-site Production System):生産を複数の農場(サイト)に分散させて、オールイン・オールアウトの流れを作ろうとする方法です。例えば種付け・妊娠・分娩舎、離乳舎、そして肥育舎の3サイト、種付け・妊娠・分娩・離乳舎と肥育舎の2サイト、または種付け・妊娠・分娩舎、そして離乳・肥育の一貫飼育舎(ウィーン・トゥ・フィニッシュ)の2サイトに分散し、オールイン・オールアウト生産で、飼育室または飼育舎、農場ごとで動物を移動させることができます。米国では肥育舎や離舎は、複数の場所に分散させる方法もよく採用されています。さらに農場ごとの飼育を専門的に行うことで生産性の向上も図ろうとするものです。

 

エピソード:米国の大型生産システムでは5サイト生産も実施されています。例えばサイト1:母豚の育種農場、サイト2:母豚になる若雌豚の育成から初産母豚の分娩と離乳まで、サイト3:2産以降の母豚の分娩と離乳まで、サイト4:離乳から肥育・出荷までの一貫飼育、サイト5:屠場への運搬車の掃除・水洗・消毒・乾燥です。1農場母豚3000頭を10人のスタッフで飼育します。この5サイトシステムを2ライン持つことで、さらにリスクを分散します。サイト2とサイト3で、産次分離飼育がなされています。初産豚は、発達途中で栄養的にも免疫的にも未発達なので、別に飼育し2産次以降の母豚とは違った飼育法をするというものです。左下側の図は、ミネソタ大学Deen教授が作成したものを一部改変しました。

マルチサイト生産
5サイト生産
  • 動物の流れを一方向に(例:ピッグフロー:Pig-flow):グループ生産、オールイン・オールアウト生産、マルチサイト生産を組み合わせることで、繁殖部門では授乳豚群・離乳母豚群・妊娠豚群とし、肥育部門では複数の離乳豚グループ、肥育豚グループに分け、グループ毎に移動させてつくる生産の流れのことです。流れは常に一方向にして、例えば肥育舎から離乳舎へ逆戻りさせない、さらに時系列で作ったグループ間での移動もしないようにすることで、日齢の違う豚間の感染を防ごうとするものです。動物群が場所を移動するごとに、その場所で空白期間ができ水洗・乾燥・消毒期間を設けることで疾病発生のリスクを低減できます。動物群も均質な性別、年齢、生産ステージなので飼養管理がしやすい。

 

  • バイオセキュリティ(Biosecurity):目的は動物間と農場間の病気の伝播を防ぐことです。そのためには、違った健康状態の豚同士の直接または間接的接触によるリスクを避けることで、病気発生のリスクを下げ、さらに飼育施設の分散で病気伝播のリスクを分散させるのです。以下に特に注意すべきです。

  1. 若雌豚と種雄豚の導入時の隔離と馴致と検査

  2. ワクチンの定期的使用

  3. ネズミの駆除

  4. 人と運搬トラックに対する全豚舎での厳しい出入り制限

  5. 他の農場との距離、これは大切ですが日本では困難

 

  • 戦略的投薬法 (Strategic medication): 肥育豚に対する、短期間で集中的な投薬法。最近では法的な規制があり実施しにくくなっていると思われます。

B. 農場から病原体を排除するアプローチ

  • 全淘汰・全入れ替え法 (Depopulation/Repopulation): 農場にいるすべての豚を淘汰し、あたらしく病気のない繁殖豚を導入する方法。他の場所で新しく導入する繁殖豚の準備が必要。

  • 部分的淘汰法 (Partial depopulation): PRRSのコントロールのためミネソタ大学のJoo教授が提案した方法です。週ごとのバッチで、2から3週間分の離乳豚グループを、離乳豚舎から動かして、離乳豚舎を空にします。繁殖豚はそのままで飼育できます。最近では、マイコプラズマ性肺炎とアクチノバチルス性肺炎の排除のためのスイス式部分的淘汰法が有名です。スイスが国家として以下のステップで実施したのでスイス式と呼ばれています。1)農場から10か月齢以下の豚を淘汰または他へ移動、2)2週間分娩を中止、3)農場内の残っている母豚で分娩していない雌豚に、マイコプラズマ性肺炎に効果のある抗生剤を投薬します。

  • 群閉鎖 (Herd closure) と投薬法: PRRSやその他の排除のためにミネソタ大学のTorremorell教授によって提案されたものです。何か月か外部から種豚を導入せず生産を行うことで、すべての豚が感染し抗体をもつようにする方法です。

PRRSのコントロールまたは排除のための群閉鎖手順

 ASSV2003年での Luc Dufresne獣医師の発表をまとめました。コントロールとは、人によって定義が違う、あやふやな言葉なので、「以前に感染していた母豚群から、陰性で感染していない離乳豚を生産できている状態」と定義しています。排除とコントロールの違いは、排除では、PRRS陰性の若雌豚を導入し、コントロールではPRRSを若いうちに暴露され、もう病原体を90日以上排出していいない若雌豚を導入します。

BDS4 (1).JPG

手順1:群全体への確実な暴露

 4つのオプションがあります。1)何もしないでウイルスがすべての豚に自然に広がるのを期待する、2)病原体ばらまき用の豚(淘汰予定母豚、離乳豚)を使用する、3)TGEで使用されているように、感染豚の内臓ミンチや血清などの接種、4)生ワクチンを使用。

手順2:群閉鎖

 群閉鎖の前に十分な頭数の若雌豚を農場に導入しておく。とくにアウトブレイク後で十分にウイルスが農場を循環している時に。もし排除するなら離れた場所で陰性の若雌豚を準備し交配していく。安全な隔離場所を持っていることが必須。

 群閉鎖中は、オールイン・オールアウトを忠実に実行し、衛生状態を上げる。分娩舎ではMcRebel法(下記参照)を使用して、ウイルスが拡散しないようにする。また母豚への注射針は頻繁に変更する。

手順3:閉鎖後に新若雌豚の導入

 コントロールが目的の場合は、若雌豚を若いうちに暴露し馴致します。馴致の基本ルールは以下です。

  • 別の豚舎か室を用意する

  • 暴露・回復・病原体の排除なしまでの期間は最低でも120日は確保する

  • 回復期では完全に群閉鎖

  • 複数のPRRS株の暴露は避ける

  • 若雌豚バッチ間でも一致して暴露

 排除が目的の場合は、農場からウイルスが完全に消滅したという時点で、陰性の若雌豚を農場へ導入します。その後またしばらく閉鎖します。成功率をあげるために以下が奨められます。成功率を上げる注意点は以下です。

  • 導入前に、ウイルスの存在が陰性で、血清陰性の見張り用豚を置き、ウイルスがないことを確認する。

  • 最後の陽性豚の交配から初めての陰性豚交配まで4週間あける。

  • 隔離されている陰性若雌豚は違う豚舎にする。

  • 陰性と陽性の雌豚が接触しないようにする。

手順4:暴露した母豚を順次淘汰し、群をPCR検査でモニター

 コントロールの場合の注意点は以下です。

  • 6週齢以下の子豚をPCRで検査する

  • 若い群の感染率は低い

  • 古い群は感染しやすい

  • 95%の信頼区間で10%の有病率の時に10週齢の子豚が陰性だからといって、完全に陰性とは限りません

  • 検査回数を増やすことが大切

 排除の場合は、通常のペースで暴露した母豚を淘汰します。2年ほどかかります。こうすることで、経済性に大きな負担なく、かつ母豚年齢構成や生産性に悪い影響もなく実行できます。注意点は以下です。

  • 陰性の若雌豚を導入後は、定期的に検査すべき

  • 肥育豚は1か月に一度検査すべき

  • もし検査で陽性となったら、その豚はすぐ隔離し、シーケンサーでその株の配列を調べ、その株が農場に元からあったものなのか、農場で新株なのか、その株は肥育豚にまで及んでいるのか調べる

手順5:肥育豚からのPRRSの排除

 繁殖豚でのPRRS排除により、PRRS陰性の離乳豚が生産されます。そして最後に肥育豚群からPRRSを排除します。暴露された豚群を他農場へ移動、または出荷し、その肥育農場の清掃・水洗・乾燥・消毒することで排除します。よくやる失敗は、この時期が早すぎることによっておこります。繁殖群で陰性離乳豚が確実に生産されるまで待つべきです。

​参考文献:Dufresne. Control and elimination of PRRS in multiple site production, AASV 2003, 541-546.

PRRS被害排除のためのMcRebel法

 米国の北カロライナ大学のM. B. McCAW博士の発案。PRRSによる死亡率を少なくするための細菌感染をコントロールする管理(Management Changes to Reduce Exposure to Bacteria to Eliminate Loses)の大文字を組み合わせたものです。オリジナルでは母豚間の里子を禁止し、オールイン・オールアウトの完全実施が柱です。

 なぜ細菌感染を防ぐことが大切かというと、3つの前提条件があります。1)新生豚は細菌なして生まれてくる(例外は連鎖球菌スイスStreptococcus suis);2) PRRSの9つの野外株のどれも主な細菌を保有しないSPF子豚を殺せなかった;3) PRRSの野外株のほとんどの臨床症状と死亡は、細菌の二次感染によったものだったからです。この方法は、二次的細菌感染をなくして、PRRSウイルス単体にしようとするものです。McREBEL法は、市販ワクチン接種で制御できない野外株に感染されていると思われる農場の母豚群で存在し、感染循環している離乳舎のPRRS問題の解決が報告されてきています。分娩後24時間以後の母豚間の里子を禁止し、小さい子豚をグループ以外に移動させない、死産・流産子豚のフィードバックをしない、オールイン・オールアウトの完全実施が柱です(図参照)。なおこの方法は、市販ワクチンのない他の疾病にも応用されています。さらに以下も報告されています。

  • 分娩後24時間以降の里子はしない。たとえ24時間以内であっても、乳頭が不足する場合のみ、かつ同じ分娩室のみです(この24時間ルールは妥協です。里子禁止とするのでは、どうしても乳頭の足らない分娩腹ができてしまうからです)。なおサイズや性別による里子は禁止です。24時間後でも例外は、母豚が死んだ場合と乳腺炎を起こした場合のみです。

  • 哺乳子豚と離乳子豚はオールイン・オールアウトの完全実施

  • 哺乳豚は違った分娩室のナース母豚への移動はなし(とくに成長が遅れている哺乳豚を後に分娩した母豚に移すことは、米国農場よく行われていたのですが禁止です)

  • 抗生剤セフチオフル(商品名Naxcel)の体重当り1.36gを1日おきに3回注射で、症状が改善せず、痩せて予後不良となった子豚は、他の子豚への二次感染源にならないようにすぐ安楽死させ別の場所へ移す。
    参考文献:McCaw MB. Effect of reducing crossfostering at birth on piglet mortality and performance during an acute outbreak of porcine reproductive and respiratory syndrome. Swine Health Prod. 2000;8(1):15-21.

マックリーベル法PRRS予防

マイコプラズマ性肺炎を例にした群閉鎖
 米国ではマイコプラズマ性肺炎の排除の重要性と可能性が言われています。マイコプラズマ性肺炎でも群閉鎖が有効です。マイコプラズマ性肺炎を例とすると、以下のキーポイントがあります。1)若雌更新豚を含めて、すべての豚に病気の暴露を行う、2)最低でも8か月は豚を導入しない、3)マイコプラズマ性肺炎のワクチンをすべての豚に接種する、4)マイコプラズマ性肺炎陰性の新しい若雌豚を導入する前に、全豚に抗生剤の投薬を行う。以下に米国Yeske獣医師による3つの方法:マイコプラズマ性肺炎の場合の群閉鎖2法と全淘汰・全入れ替え法の週別プロトコールを示します。最近では日本でも全淘汰・全入れ替え法を実施する農場がありますので、掲載しておきます。

参考文献

Holst S, Yeske P, Pieters P. Elimination of Mycoplasma hyopneumoniae from breed-to-wean farms: A review of current protocols with emphasis on herd closure and medication. JSHAP, 2015:23:321-330.

Yeske P. Mycoplasma hyopneumoniae elimination. AASV, 2007:367-370.

BFY5 (1).JPG
群閉鎖とオフサイト農場
BFS6 (1).JPG

米国流の「そうじ・散水・洗剤で水洗・乾燥・消毒・乾燥」の6ステップ

米国獣医師Dr. Matt Ackermanが消毒のやり方について以下のように推薦しています。

  1. 消毒しようとする部屋を完全に空にする。つまりすべての器具や道具(例、ヒートランプや哺乳豚用のフィダー)を部屋外に出す。それらは別に徹底的に洗う。

  2. 部屋に散水。

  3. 洗剤を散布する。バイオフィルムと呼ばれる微生物の塊(例、歯垢や流しにこびりついた粘着物)を取り除くために、生分解性の洗剤で脱脂できるもの(ネットで商品名は検索できます)がよい。

  4. 熱湯を使ったスチーム・クリーナーで洗う。

  5. 部屋を乾燥させる。

  6. 消毒薬を散布。

  7. 動物を入れる前に部屋を完全に乾燥させる。

  8. 場合によっては、さらに乾燥させるために、乾燥剤パウダーをまく

そうじ・水洗・消毒・乾燥とよく言われていますが、「そうじ・散水・洗剤で水洗・乾燥・消毒・乾燥」の6ステップが正しいようです。違った消毒薬で消毒を2回する農場もあるそうです。なお日本で使用されている製剤名(商品名ではありません)と効果のある微生物を示した表を農水省のサイトで見つけました。https://www.maff.go.jp/nval/iyakutou/koenshiryo/pdf/170226_jyuigakujyutsu_shodokuyaku.pdf

消毒薬と微生物

悪癖:尾かじり・耳かじりのリスク因子/引き金

 爆発的におこるので、起爆剤または引き金という言葉がよく使われます。悪癖のリスク因子や引き金は多数あります。生産者は、尾かじりのリスク因子の連鎖を解明するために、忍耐強く、鋭い洞察力を持つ必要があります。複数の要因が重なり合って、その結果としてその悪癖プロセスが開始されるようです。

栄養面では、急速な成長に合わせたバランスの取れた栄養の供給が必要です。カビ毒もリスク因子または増強因子です。

引き金例

  • 短時間・長時間であろうと飼料や水の供給の制限

  • 水道ラインや飼料ライン中断

  • 飼料フィダーの皿部分の不十分な飼料量

  • 飼料フィダーのスペース不足は決定的。飼料へのアクセスが制限された場合には、60%の尾かじりが飼料フィダーの1メートル以内で起こったと報告されています。飼料へのアクセスそして飼料給餌の中断の悪癖発生の重要性を示しています。

  • 飲水器の水圧および流量、水の摂取量が制限されると、飼料の摂取量も制限されるからです。

気温・室温面では、地域や施設の設計によっては、居住性に大きな影響を与えることがあります。

  • 国によって、夏の高温と不十分な空気循環のために、悪癖・尾かじりが季節的な問題になっています

  • 換気が悪いと、暖房や機械換気を備えた豚舎内でも、暑い場所や寒い場所ができてしまうことがあります。冬場は空気の流れが悪くなり、不適切な空気の流れ ガス(NH3、H2S、CO2)の蓄積や高湿度、そして濡れた床面は、悪癖の引き金となります

 

病気の問題 (例: PRRS や インフルエンザ)では、不快感や過敏になることで直接引き起こしたり、飼料や水の摂取量に間接的に影響を与えたりすることで、悪癖の急増を引き起こす可能性があり

集団行動は、ストレスを引き起こす可能性があります。噛む加害豚から逃れるための豚の能力に、群れの大きさや施設デザインが影響します。豚を混ぜると、グループでの集団行動が混乱し、活動が活発になり、攻撃性が増し悪癖が起こることもあり

尾の長さ自体が尾かじりに影響を与えます。

  • 6.35ミリに尾切りすると、12.7ミリよりも尾をかじることが少なくなります

  • しかし尾の長さがバラついていると、尾かじりが最も大きくなります

Tail1 (1).JPG

どうすればいいのか

悪癖・尻かじりを防ぐには、上記すべての因子に対処する必要があります。これは日々の義務です。

  • 悪癖・尾かじり問題が起こった時には、すぐ被害豚を移動させ治療する。そうすることで、細菌感染の確率を減らし、他の豚からの攻撃も防げます。

  • 同ペンに、何か吸ったり、噛むことができるエンリッチメントやおもちゃを与えることで、同じペンにいる豚の集団行動を変化させます

  • 照明の強さを下げることで豚間の活動を減らす

  • 加害豚を見つけて、病豚ペンから離れた独居ペンへ移動させる

注意:PRRSやインフルエンザの発症があると、引き金になる。

注意:スス病豚は被害豚になりやすい。

 

米国では、飼料配合の検討や変更は、最初に検討されます。使用されている飼料配合率と成分は、業界または適切な種豚会社が提供する最新のガイドラインと比較すべきです。

 

エンリッチメント材料

これまで予防や治療として使用されてきたエンリッチメント材料は、根本的な問題を解決するものではありません。

  • 最も効果的なのは 噛むことができ、変形し、破壊することができる材料です。それらは豚は非破壊のおもちゃに興味を失うので、チェーンやボウリングのボールのような伝統的な "おもちゃ "より好まれます。

  • 塩ブロックは、塩分摂取量の増加(食餌の変化)と豚が遊ぶ手ごたえを同時に提供するために、しばしば利用されます。

注意点、まず悪癖・尾かじりと、感染による壊死との区別が重要です。

米国でよく使用されている予防のガイドライン(下の表参照)

  • 尾の長さは、断尾時6.5 mm、くれぐれも個体でバラツキがないようにしてくさい。断尾の長さがバラつくと引き金になります。

  • 飼育密度は、離乳豚は0.26 ㎡、22-35 kgの子豚は0.34 ㎡/豚;、35-120 kgの肥育豚は068㎡/豚を目安にしてください。

  • 温度管理はブルーダーとマットは表面35℃を目安にしてください。

  • 換気の空気速度では、トンネルベンチ90-120 m/分を目安に、隙間風のないこと、ピットファン・センサー・換気扇の羽根のそうじ、床下ピットのガス濃度点検も忘れずに。

  • 飼料フィダーでは、離乳豚では2.5 cm/豚、肥育豚ではドライ型だと5 cm/豚、ドライ&ウエット(D&W)型飼料フィダーでは3.5 cm/豚を目安にしてください。

  • 飼料フィダーの飼料皿のカバー率では、離乳後1-7日だとカバー率50%-70%で、離乳後7日以降はカバー率40%-50%、肥育豚は30-40%を目安にしてください。尾かじりや耳かじりの悪癖が発生した時はカバー率をさらに20%増やすとよいでしょう。

  • 飼料切れに気を付けましょう。飼料フィダーに24時間分の量を入れておくのもアイデアです。

  • 十分な水を与えるために、飲水器当り10頭を目安に、流速は離乳豚には0.5L/分、肥育豚には1L/分を目安にしてください。

  • 飲水器の高さの管理としては、90℃角度のニップル型では最小豚の肩レベルの高さ, 60℃角度ニップルでは最小豚の肩レベル5-7cmの高さを、ボール型飲水器では最小豚の肩40%ぐらいの高さにセットすることを目安にしてください。ポイントは豚の平均の高さでなく、最小豚にあわせるのです。

Tail2 (1).JPG

分娩母豚の子豚噛みつき or 子豚殺し

 母豚の子豚噛みは初産の母豚に多く、分娩前の妊娠豚の神経質さや不安と関連しています。種豚ラインや品種によっては、特にクレートに入れる前にグループ飼育や放牧にしていた場合、新しい分娩環境に対する恐怖と関連している可能性があります。分娩に伴うホルモンの変化は、この行動の一因となる可能性があります。その病気になった母豚が子豚を襲うようになったり、切歯のある子豚が乳房を傷つけて痛がったりするケースもあるようです。また、飼育スタッフとの関係が悪かったり、子豚が母豚の前を頻繁に通るような状況で母豚を分娩クレートに入れている場合も、子豚への噛みつきを起こしやすくなります。

 子豚に噛みつく初産豚は、神経質な外見と野性的な目つきで見分けられることが多い。それらは飼育者に対して攻撃的で、うなり声をあげ、頭部を振ることがあります。子豚の最初の2か3頭はかみつかれるか、または脅かされるか、または単に食べられるかもしれません。雌豚が神経質なままであれば、子豚全体が破壊されるかもしれません。この行動は通常、最初の産次に限られるが、その後再発することもあります。傷ついた子豚は、暖かい分娩環境で迅速に乾燥し、回復します。

治療と予防:子豚が分娩したばかりの母豚の前を歩かないように、生後15~20分間はクリープの中に閉じ込めておきます。鎮静剤(商品名アザペロン)を注射して母豚を精神安定させ、恐怖心を軽減させることができます。子豚は母豚に徐々に慣らしてから、授乳させます。子豚と母豚の最初の接触は、母豚の狂暴化を防ぐために注意して観察する必要があります。発生を記録し、前産次で子を殺した母豚は、子豚が安全になるまでしっかりと観察することで予防することができます。分娩舎に入る若雌妊娠豚は、神経質になっている徴候がないか評価するべきです。新しく分娩クレートに入った豚は、わらなどを与えられ、遊んだり、食べたりすることができるようにするべきです。分娩舎は暖かく、隙間風がないようにし、騒音等は最小化されるべきです。

出典 Pig progress https://www.pigprogress.net/topic/savaging-piglets-cannibalism-puerperal-psychosis/

5グループ4週毎のバッチ分娩例

 2023年2月2日のKSUのProfitability (利益) 養豚会議で発表がありました。詳しくはYoutubeのhttps://www.youtube.com/watch?v=pgF9hY1CbiEで。

 米国Claassenファミリー農場は、母豚750頭で養豚一貫経営と畑作で経営していました。週に50分娩させ、週に1.5回出荷していました。米国では小規模で、施設も30年以上経ち古くなり、成績もよくない。しかし後継者が帰りたがっていることから、65歳の社長はアドバイスを求めました。小規模ファミリーファームが、大規模農場に負けない経営を目指すために、Abilene Animal Hospital のDrs. Henry, Tokach, Potter, Martinに相談しました。2017 年2月のことでした。

彼らからの推薦は、

  • バッチ分娩に移行する、5つのグループで4週毎の離乳、1回の離乳で2500頭を離乳

  • 離乳・肥育一貫飼育(1サイト当り999エーカー=4000 m2)で6つのフローでオールインオールアウト生産

  • 若雌豚育成ユニット(GDU)付の母豚1200頭に増頭すること

  • 自分の畑で糞尿を処理する

5グループ4週毎離乳

実行した順番

  1. 離乳・肥育一貫豚舎を1棟建設、2018年

  2. 新母豚舎建設、4週間ごとに2500頭のSEW豚を離乳する

  3. まずは4週間ごとの離乳で、肥育6グループの偶数グループはSEW子豚として販売。2019年夏。

  4. カナダのJyga社の授乳・妊娠システム使用

  5. PICのバッチ分娩の技術サービス利用

  6. 元からあった分娩舎と肥育舎を2500頭分の離乳・肥育一貫豚舎に転換

  7. 3つ目の離乳・肥育一貫豚舎を1棟建設、種付け舎があった場所

  8. 糞尿はすべて自農場の畑で肥料として利用

  9. 残り3棟の離乳・肥育一貫豚舎を建設予定

Inter-batch法を使用(中間バッチ、バッチ間に小さなバッチを設けることで、発情再起豚に種付け)

  • 1バッチに200腹離乳し、20腹はInter-batch法つまり不完全バッチで、獣医師は賛成せず

  • 最大の欠点はオールアウトができない

  • 最大の利点は非生産日数が減らせる、もう一つの利点は、inter-batchの母豚をナース母豚に使える

 

注意

  • 必要な施設数を確実に

  • バッチ分娩で成績を上げる管理

  • 労働力を減らし成績を上げる最新技術の導入

  • 集中した使用に耐える十分な電気量と水量の確保

  • 集中した使用ができるパワー水洗施設・機具の準備

  • 集中使用するための精液パック保存庫と予備保存庫

  • 若雌更新豚の育成ユニット併設

  • マトリックス(合成黄体ホルモン)を使用した若雌豚の発情同期化

  • バイオセキュリティを確実に

繁殖農場

  • 母豚1200頭を4人で管理。30-35日はストール飼育するため、528ストールを用意、1バッチの母豚と若雌豚にMatrix給餌。

  • 妊娠舎では1頭当り1.86平米、Jyga Gestal 3Gで3バッチを十分保持できる能力、妊娠豚50から60頭収容できる12ペン、30頭を収容できる3ペン(Inter-batch用)、合計690頭分。初産豚には16頭の子豚、2産以降母豚には14から15頭を。

 

若雌更新豚の育成ユニット(GDU)

  • 11週齢でGDUに導入。110~120頭が8週ごとに導入。Gestal Evo使用。

 

授乳舎、Gestal Quatro使用。

  • 離乳後、200基の分娩クレートを掃除・水洗・消毒を2日で。

 

種付け

  • 1回の配送で250から300ドース分の精液。1バッチで5回の配送。2回は主バッチで、3回はinter-batch。精液配送は農場外オフサイトで受取。精液保存庫を2つ用意。1つはバックアップ用予備。

 

バイオセキュリティ方針

  • 入り口はデンマーク式ベンチ

  • 排気ダクトと紫外線殺菌箱

  • 飼料配送は月曜、トラックは48時間ダウンタイム

  • 農場で豚運搬専用のトラックとトレイラー使用

  • すべての配送受取は農場のオフサイトで

  • 飼料運搬車から豚舎に来る場合は、運転手は使い捨てブーツで

  • 監視カメラ設置

スケジュール

  • 離乳は木曜、28日バッチカレンダー使用

  • 離乳日は朝4時から、まず子豚を3時間で移動、そのあと母豚移動、2つの分娩室はその日のうちに乾燥までして、金曜日に妊娠豚導入。もう2つの分娩室は金曜に消毒までして、月曜に妊娠豚導入

  • 種付けが月曜と火曜に集中し、水曜には3回目交配が終わる

  • Week 1の水曜から土曜に分娩が集中、水曜の朝から土曜日夕方まで24時間ケアを実施

  • Week 2の月曜から水曜は子豚の処置を

  • 月曜には妊娠鑑定し、確認後に妊娠ペンへ移動

  • Week 3はメンテの日、若雌豚にMatrix給餌

  • Week 4、離乳前ワクチン接種

BFS1 (1).JPG

バッチ分娩移行後の1年の繁殖成績(メタファーム社ソフト)

  • 分娩率:87%

  • 年間種付け雌豚当り分娩腹数: 2.37

  • 年間種付け雌豚当り離乳頭数: 30.4

  • 母豚死亡率(安楽死含む): 7.9%

  • 分娩時生存産子数: 14.4

  • 母豚当り離乳子豚数: 12.4

  • 離乳体重: 6 kg

  • 平均離乳日齢:20.5

離乳からの出荷肥育成績

  • 導入体重: 6 kg

  • 出荷体重: 127 kg

  • 死亡率: 4.23%

  • FCR: 2.62

  • 平均日増体: 817 g

  • 出荷までの日数: 148 days

  • 1頭当り平均日飼料量: 2.15

  • 1頭当り飼料量: 318 kg

米国流バッチ分娩

 バッチ分娩システムには問題があります。例えば、いつ何頭の若雌更新豚をグループに加えるか、再発した母豚を見つけ、どのように別のグループに入れるか、などです。夏の暑さが雄豚や母豚に与える季節的な影響も、分娩率やグループあたりの生産頭数にばらつきを生みます。

 それでもなぜ効率の悪いバッチ分娩システムなのか?大きな理由は、中小農場にとって、分娩施設をより効率的に使用し、離乳豚の大きなグループを生産して、より大きな離乳・肥育舎に移動することができるようにできることです。大きなグループは離乳豚の輸送コストも下げることができます。米国では、より大きなグループの離乳豚は、より良い条件や価格で取引されます。

 

 例として、120分娩クレートを持つ700頭の繁殖雌豚農場を上げます。この例では通常、1週当たり30産を分娩し、300以上の子豚を離乳します。

 この農場が4週分バッチ分娩 に移行した場合、1グループ142頭母豚を種付けし、5つの母豚グループを持ちます。85%の分娩率で、1週当たり120母豚を分娩します。農場は1分娩腹で10頭の子豚を離乳することができれば、4週毎に1200頭の子豚を離乳することができます。

追加:米国やカナダの大農場(母豚1000から3000頭)も、バッチ分娩システムを使用しています。これらの農場は、健康のために週毎の分娩から4週分バッチに変化したのです。分娩室100%を空にすると、PEDの発生率を下げるかまたは除去に非常に良い方法だからです。子豚と雌豚とって、本当のオールインオールアウトの流れを作ることができ、加えて、肥育成績に大きな利点(ADGとFCの改善)があります。5/4システム4週分バッチ分娩は、大規模農場のためのオプションでもあります。

出典:By Ron Ketchem and Mark Rix, National Hog Farmer, 2014

www.nationalhogfarmer.com/weekly-preview/0912-batch-farrowing

www.nationalhogfarmer.com/business/should-you-consider-batch-farrowing

www.nationalhogfarmer.com/genetics-reproduction/how-batch-pig-farrowing-impacts-production-0906

オーストラリア政府は計画用ソフトも公開しています。

www.dpi.nsw.gov.au/animals-and-livestock/pigs/management/batch-farrowing

欧州Pig333ではシミュレーターも紹介されています。

ttps://www.pig333.com/batch_management_simulator

バッチ分娩の選択肢

10/2システム - 10グループの母豚で2週間ごとに1グループずつ分娩します。農場の活動としては、1週間で離乳させ、次の週に種付けし、週の半ばに分娩を開始し、次の週にまた離乳が始まります。

7/3システム - 母豚の7つのグループと3週間ごとの分娩で、作業負荷は1週間の種付け、次の週の分娩、そして3週目の離乳と分散されています。分娩室の6週間で1回転します。つまる3週間ごとに分娩クレートの半分を使用することになります。母豚を種付けした日数に基づいて、14〜28日の離乳日齢となります。分娩クレートの回転数が低くなります。

5/4システム –5つの母豚グループで、 4週間ごとに分娩します。1グループですべてのクレートを使用します。このシステムは、1週間の離乳、次の週にそのグループを種付けし、週の半ばにグループの分娩を開始することによって流れ、その後2週間の空白ダウンタイムがあります。離乳日齢は15~22日齢です。

4/5システム – 4つのグループで5週間ごとに分娩します。作業は、1週間の離乳、次の週の種付け、次の週の分娩、次のグループの離乳前に2週間の空白ダウンタイムが続きます。これは、離乳年齢が14〜28日の範囲で14日まで繁殖することができます。

表  は、5つの バッチ分娩システムについて、離乳年齢(日)、回転数/クレート/年のバッチ分娩のまとめを示しています。離乳年齢を7日未満の間で離乳する必要があります。10豚の離乳/リットルと仮定すると、年8.7から13回の年間分娩クレート回転数となります。

Bfsummary (1).JPG

バッチ分娩システムの実際

  • Matrix(Intervet/Schering-Plough Animal Health)というホルモン様製品で、種付け予定の最低 2 週間前から雌豚に与えます。この製品を取り除くと、雌豚は数日以内に発情期を迎えます。

  • 再発した母豚の管理が困難 - 再発母豚をグループに戻すのが難しい場合があります。分娩率が高い場合は、再発母豚を淘汰するか、別のグループのために保留することが進められています。

  • 子豚の生存率の向上 - 月曜日に母豚の離乳から始めると、その後の妊娠期間で、種付けし、離乳から種付けサイクルの日数に基づいて、月曜日から金曜日のスケジュールで分娩を開始します。これは、4-5日の分娩ピーク時に母豚に分娩介助するために利用可能な余分な人員を持っていくことができ、死産を減らすことに焦点を当て、子豚を乾燥させ、子豚の分割哺乳もできます。

  • ナース母豚の使用困難 - 2-5週間ごとに分娩しているので、分娩時に余分な母豚で利用可能なナース母豚を持っていることは困難です。分娩時子豚が多い場合は、救助ボックスで2日齢以上の豚に補助ミルクを供給してみてください。

  • 労務管理が難しくなる – 生産コストを抑えるためには、1人当り300~350頭の母豚とする必要があります。700頭の母豚を飼う農場では、2-3人です。7/3システムでは、労働力は毎週均等です。10/2グループでは、ある週は離乳し、次の週は繁殖と分娩で忙しくなります。5/4システムと4/5システムは、均等な労働の使用に問題があります。どちらも離乳、繁殖、分娩が集中して行われ、そして空白ダウンタイムが2週間あります。母豚の大きなバッチで、種付けと分娩と処理の集中で、スタッフの疲労を引き起こす可能性があります。

  • 1グループでの分娩数が増える - 例、700頭の母豚で120分娩クレートを持っている場合、5 / 4システムでは、4週間ごとに120産を分娩し、1,200頭の子豚を離乳することができます。農場が大きい場合(300分娩クレートで、1,600頭の母豚)、4週間ごとに3,000 頭の子豚を離乳することができます。または、10/2システムを使用すると、1,500 頭以上の子豚を離乳できます、2週間ごとに150産を分娩し、子豚1500頭を離乳することができます。後者のオプションは、より多くの労働力を分散できます。

  • 雌の発情を制御する能力があるなら、種付けグループをいっぱいに保つことが容易になりました。さらに分娩子豚用の救急ボックスを使用すると、ナース母豚なしで多く生まれた子豚を扱うことができます。最大の問題は、スタッフの時間をいかに管理するかです。

欧州流の5/4バッチ分娩システム(4週分バッチ分娩)

Dr. Carlos Pineiroの欧州PigCHAMP ProがPig333で紹介しています。

出典:ttps://www.pig333.com/articles/4-week-batch-farrowing-another-option-for-small-farms_12118/

 

 今日の欧州養豚業界では、生産性の高い母豚500頭までの中農場では、1週間以上のバッチ分娩システムを使用することは非常に一般的です。これらのバッチ分娩システムの利点は以下です。農場の仕事の効率化、ならびに時間的間隔があき、それらの間の大きな日齢差で、より大きな離乳バッチの生産による健康とピッグフローと運送の両方に利点があります。

 スペインで最も一般的な管理は、3週間ごとのバッチ分娩で、平均授乳期間は約28日ですが、バッチ分娩システムにはいくつかの種類があります。

 ここでは、フランスを含む他のいくつかの国の中小規模農場(250 母豚)で非常に一般的な 4 週分バッチ分娩(欧州では4WBFと呼び、米国では5/4システムと呼ぶ)について説明します。3週分バッチ分娩(3WBF、米国では7/3システムと呼ぶ)との比較で行います。

授乳期間

 3週分バッチ分娩が28日の授乳期間を必要とするのに対し、4WBFは21日の授乳期間となります。

バッチサイズ

 4週分バッチ分娩は母豚の5バッチで、3週分バッチ分娩システムよりも2バッチ少なく、したがって、バッチサイズが大きくなります。例として、250頭の母豚を飼う農場では、4週分バッチ分娩では1バッチあたり約50頭、3週分バッチ分娩では約36頭の分娩が行われます。離乳バッチ間の日齢差は、4週間バッチ分娩では 4 週齢、3週間バッチ分娩 では 3 週齢です。4週分バッチ分娩のバッチサイズが大きく、バッチ間の日齢差が広いことは、健康面と運送面で有利になります。一例として、一貫生産農場では、バッチが大きければ大きいほど、屠畜へのトラック台数が少なくなり、バイオセキュリティなどの分野が大幅に改善されます。

週毎のプラニング

 下の表は、両システムの管理における主な作業(交配、分娩、離乳)のシンプル化した週間計画を示しています。7/3は3週分バッチ、5/4は4週分バッチです。7/3システム(3週分バッチ分娩)の方が、仕事がより広範囲に分散されます。しかし5/4システム(4週分バッチ分娩)は、最も重要な仕事(交配、分娩、離乳)から2週間解放されることで、農作業、休暇、トレーニング、メンテナンス作業、一般的な清掃など、他の活動をよりよく組織化することができます。

BFS2 (1).JPG

分娩施設使用の最適化

 離乳舎や肥育舎の施設を考慮せず、母豚の施設のみを考慮した場合、5/4システム(4週分バッチ分娩)の大きな利点は、分娩クレート使用の最適化です:分娩は4週間ごとに行われ、授乳期間は3週間であるため、それは1分娩バッチ用の分娩クレートを必要とするだけです。

250雌豚の農場は7/3システム(3週分バッチ分娩)で作業する場合に75〜80分娩クレート(分娩室2つで)で、5/4システム(4週分バッチ分娩)では50〜55分娩クレート(分娩室1つ)が必要です(下記表参考)。一方、5/4システムは、より大きなバッチが離乳されるので、より多くの妊娠雌豚の施設が必要になります(分娩クレートは常に妊娠雌豚の施設よりも高価であることを忘れてはなりません)。

BFS3 (1).JPG

離乳・肥育豚の生存率をあげる群健康プログラムの見直し戦略

 

現在、米国では生存率や死亡率改善から一歩進んで「Livability (生きやすさ)」改善が重視されています。死亡率を下げ生存率を上げるだけでなく、もう一歩先を目指そうということでしょう。

出典:Christine Mainquist-Whigham, Leman conf. 2022. https://www.youtube.com/watch?v=NFOjuFVNDZI

米国大手Pillen Family Farms社 (母豚75000頭)が生存率を上げる具体策検討法です。

群健康プログラムの見直し戦略の実例

生存率をあげるために、すべての群健康プログラム(例、洗浄・消毒プログラム、洗浄剤、ワクチンのタイミング、授乳期の抗生剤投与、導入時、換気、導入頻度、導入時マットでの給餌、自農場での飼育密度、抗生剤の使用量)を見直した。その見直し戦略は、

1)ゼロベースにして、群健康プログラムをいったんすべてやめる

2)検証して、ゆっくりと一つ一つもどしたり変更させてゆく

3)変更やもどすのは1回で一種のみ

4)記録してゆく。変更前はロタウイルス下痢の問題があり、高い死亡率15%で、抗生剤(デナガード、CTC、メカドックス)も使用せざるを得なかったが、現在使用していない。

実例1, 洗剤(BioKleen)使用の効果検証

42万頭で360豚舎のうち、164豚舎は洗剤なしと176豚舎で洗剤使用を比較。1部屋に19リットル(5ガロン)使用、導入1頭あたり0.03ドルで、死亡率は無使用4.38% vs 使用3.23%で、1頭当り0.54ドルの付加価値ありと経済評価

 なおオールアウト後の掃除・洗浄・消毒・乾燥法は洗剤を使用した以下6ステップである。1)有機物を確実に取り去る、水浸し、表面もこする、2)洗剤(BioKleen)を散布し30分放置、濃度は64倍に、3)54℃の温水でパワーウオッシュ、4)査察、5)消毒剤(Synergize)散布、濃度125倍から256倍, 6)乾燥と空白時間24時間

実例2,混合ワクチン(サーコ、マイコ、回腸炎)の接種タイミング変更

 40万頭328豚舎のうち、旧法は離乳時に接種しその3週後の間隔で接種(遅い接種)、新方法は分娩舎での子豚の処理 (3日齢)と同時に接種し、離乳前24時間前の3週間隔で接種(早い接種)を検討。遅い接種は187豚舎で早い接種は141豚舎で比較。死亡率は早い接種2.51% vs 遅い3.24%、飼料摂取量は早い535 g vs 遅い450 g、日増大量は早い360 g vs 遅い328 g、飼料要求率は早い1.544 vs 遅い1.628 gとなり、FCRから1頭当り0.55ドルの付加価値ありと経済評価。なお2017年以降、サーコや回腸炎は発生していない。

実例3,PRRSワクチン(導入時半ドーズ接種)をやめる

 PRRSワクチン接種を85農場でワクチン接種なし115豚舎を比較。死亡率はワクチン有2.61% vs ワクチン無2.08%、FCRはワクチン有1.55 vs ワクチン無1.51(有意差なし).FCRと死亡率から付加価値1頭当り0.67ドルと経済評価

実例4,授乳期母豚への抗生剤プルモチル投与(飲水)が離乳後の子豚の成長への影響

授乳期母豚でも抗生剤をゼロにしたかったが、薬剤なしだと離乳舎での死亡率、さらに薬剤費も上がることから、授乳豚への薬剤投与は実施。

授乳期薬剤 (1).JPG

実例5,離乳舎での離乳豚の行動と換気の適正をカメラで検証

全離乳舎にカメラを設置して、24時間の豚も行動を観察。新設離乳舎で、見た目はいいが、換気や温度設定が不適切

  • 発見した問題点1、1日で全ペンに導入できなかった時、寒さのため豚が盛っている

対応:換気量を最低にして、豚が寒くならないようにする

  • 発見した問題点2、離乳舎でのワクチン接種後数時間、豚が元気喪失する

対応:すぐ室温を上げる設定に変えた。ワクチン接種時期を授乳期に変更

  • 発見した問題点3、離乳舎の床と飲水用の皿部からの水で濡れて豚が寒そう、さらに乾かそう換気量を上げている

対応:離乳舎チームは濡れた床問題を減少するように皿部の管理を変えた

  • 発見した問題点4、換気システム(入気口、天井にある換気の障害物、ヒーターの位置、ドアの問題、風の強い日に屋根裏からの換気風が強すぎて子豚にあたる)の不備

対応:入気口の改良、天井の換気口の下に断熱用プチプチでカバーして、風が下に直接落ちないようにして、さらに天井の風漏れを防ぐためにコーキングした

対応:天井に設置してある飼料ライン、水ライン、電気ラインが換気口やヒータの前にあって邪魔なのを変更

対応:ドアの近くのペンの豚に隙間風があたる問題には、全ドアに隙間防止板を取り付けた

対応:風が強い日のために屋根裏入気口にシャッターを設置

実例6,離乳舎導入直後のマット給餌の検証

 200頭の子豚で、導入から1日6回マット給餌有と無を2日と14日後の体重測定で比較。マット給餌のほうが14日後で0.42キロ重い(1.39 kg vs 0.93 kg増体)。病豚ペンでも同様。離乳後38日での死亡率はマット給餌有1.9%と無2.7%であった。

 

実例7,離乳日齢19-20日を22-23日に増やす

離乳後7日目の体重ロスを測定した。19日齢だと35.1%ロス、22日齢だと28.7%、25日齢だと12.4%、28日齢だと9.2%ロスです。22日齢以降でロスが大きく減ることがわかった。

実例8,肥育豚舎での飼育密度の決定

1頭当り0.62 m2から0.67 m2へ増やすと、死亡率は7%から4%に減少することがわかった。0.62 m2と0.67 m2を比較した。

Density (2).JPG
DensityTab (1).JPG

さらにマイコプラズマ性肺炎は母豚舎から陰性にし、離乳舎そして肥育舎まで陰性にしました。PRRSも陰性です。その中で、抗生剤の使用は急速に少なくなっています(以下の表)。

PillenAntiBio (2).JPG

実例9,分娩24時間後の授乳母豚を日3回立たせる

 

  授乳母豚の飼料摂取量を増やし、泌乳量を増やしかつ哺乳中子豚死亡率を下げたい。さらに授乳舎の労働時間を下げるにはどうすればいいのか調べるために農場内試験を実施した。同ラインの母豚195頭を使用。コントロール区はできる限り触らない、試験区は分娩24時間後から1日3回(朝一、ランチ前、スタッフ帰宅前)立たせる。

  試験前の成績である分娩時生存子豚数や生時体重はほぼ同じです。ただ初産豚がコントロールに少ない。授乳母豚を日3回起立は、平均授乳期飼料量はほぼ同じで、哺乳中子豚死亡率は、コントロールのほうが若干いい傾向です。この結果からは、日3回起立はやらないほうがいいと結論となります。

 一番のこの試験の成果は、分娩室当りとクレート当りの労働時間がわかったこと。分娩前後の時間は入っていない、1授乳期の分娩クレート当り1.2時間ということ。さらに1時間18ドルが米国の相場です。

​出典:Leman2023, https://www.youtube.com/watch?v=Ae8Hyech2Leman2023, 

PillenLac2 (2).JPG
PillenLac (1).JPG

農場での豚インフルエンザ

米国養豚生産者協議会(NPB)からの生産者への豚インフルエンザへの警戒です。

 インフルエンザウイルスは豚から人へ、また人から豚へ感染する可能性は少ないのですが、あります。 獣医師と協力して、インフルエンザの蔓延を減らし、人と豚の間でインフルエンザウイルスが侵入するのを防ぐための群れの管理とワクチン接種の戦略を立ててください。

なお豚に感染するインフルエンザ A 型ウイルスのほとんどは、人に感染するものとは異なります。通常は豚の間で広がるA型インフルエンザウイルスが人体で発見された場合、それらは「変異型」インフルエンザウイルス感染症と呼ばれます。

 

以下の管理戦略に従うことで、豚におけるインフルエンザ A ウイルス感染のリスクや病気の重症度を軽減することが可能です。

 

  • 豚へのワクチン接種(豚インフルエンザワクチンによる)

  • 適切なバイオセキュリティ対策を使用する

  • オールインおよびオールアウトの飼育手順を使用し、豚舎や農場間の豚の移動を制限する

  • 豚舎、給餌、給水設備を清潔で衛生的に保つ

  • 豚舎などの閉鎖空間では適切な換気システムを使用する

  • 飼育スタッフに季節性インフルエンザワクチンを毎年接種する

ワクチン冷蔵庫保存時と運搬ワクチンの農場での受け取り注意点

欧州の養豚サイト・ピッグ333の記事です。出典:ttps://www.pig333.com/articles/on-farm-vaccine-handling-storage_19418/

著者はJ. Lorente

農場でのワクチンを保管する冷蔵庫の温度制御

  • 目標保管温度は 5ºC 。温度範囲は常に 4ºC から 8ºC の間。4ºC を下回らないようにすること

  • ワクチン用の最高温度と最低温度計を常に冷蔵庫内に置き、これらの温度を毎日記録するこの温度計のセンサーは、ワクチンが置かれている冷蔵庫の中央に配置する

  • 必要な場合を除いて冷蔵庫のドアを頻繁に開けないで。温度が変動します

  • 大型の冷蔵庫の場合は、冷蔵庫を閉めたときに希望の温度に早く達するように、水のボトルを下部に置くことをお勧めします。なおワクチンはこれらのボトルに触れてはいけません

  • メインの冷蔵庫が故障した場合に備えて、別の冷凍庫に予備の保冷剤を用意しておく

  • メインの冷蔵庫が故障した場合、緊急時対応システム全体が準備できるまで、冷蔵庫を開けない

冷蔵庫内のワクチンの保管を適切に

  • 凍結を防ぐために、ワクチンと冷蔵庫の壁の間は 3 cm の隙間

  • ワクチンを箱の外にだす場合は、空気の循環を可能にするために 2 cm の間隔が必要

  • ワクチンは冷蔵庫のドア部ポケットの中に置かない。温度が不安定になるからです

  • ワクチンをプラスチック容器の中に保管しない。空気が循環しなくなります

  • ワクチンは有効期限がすぐにわかるように保管。そうすれば、常に最も古いワクチンを最初に使用できます。新しいワクチンは後ろに、最も古いワクチンは前に置きます

  • 冷蔵庫を詰め込みすぎないでください

  • 冷蔵庫はワクチン専用にする。他の薬や農業資材を冷蔵庫に保管しない。

  • 決して食べ物や飲み物を冷蔵庫に保管しない

Ref.jpg

ワクチン受け取り時の注意点

農場に到着し、パッケージが受領されると、ワクチンの適切な管理の責任は農場になります。適切な受付法が必要です。

パッケージの完全性:

  • 外装の 5% 以上が破損している場合は記録しておく。

  • 段ボール箱を開けて、内側の断熱箱が破損していないこと、しっかりと閉じられていることを確認。

  • ワクチンの箱が良好な状態であることを確認

  • 水滴の痕跡がない 水滴はコールドチェーンが壊れている可能性あり

  • バイアルが壊れていない。 配送が不適切であることを示しているため、配達を受け入れるべきではありません。

 

トレーサビリティの確認:

  • 輸送シートを確認して出発時間を確認

  • 梱包明細書を確認し、実際の出荷と照らし合わせて、数量、バッチ、有効期限が正しいことを確認

輸送中の温度の確認:

  • 箱を開けたらすぐに、最高温度計と最低温度計、またはデータロガーを確認。温度は常に 4 ~ 8 ºC の範囲内であることを確認。そうでない場合は、出荷を拒否し、サプライヤーに直ちに通知する。

 

ワクチン受け取り後

  • ワクチンを直射日光にさらさないでください。 ほとんどのワクチンは光に敏感。

  • 周囲を清潔で乾燥した状態に保ちます。湿気はワクチンの保存期間を短くする可能性。

  • ワクチンのパッケージを通じて病原体が農場に侵入するのを防ぐため、すべてのバイオセキュリティ対策を遵守してください。これを行うには、次のことができます。

  • ワクチンの外箱を廃棄します。これはダーティゾーンに残しておく必要があります。

bottom of page