養豚経営情報
養豚アカデミー
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子豚のような好奇心と行動力、そして成長力を目指しています。こぶたの学校長・纐纈雄三
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米国カンサス州立大学Tokach教授からの7つの注意点
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飼料高騰と高コストへの対応する実践アイデア集(Practical Ideas to Address High Feed and Production Costs)米国ポーク生産者協議会(NPB, Ames, IA USA)
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母豚死亡の機会コスト(逸失利益)計算
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英国流飼料こぼれ改善策
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妊娠豚の飼料給餌量に注意
米国トカチ教授の喝
Dr. Mike Tokachは米国カンサス州立大学の教授です。ミネソタ大学院時代から30年以上にわたって、現場指導の専門家として、現場に役立つ栄養学の研究を行ってきました。彼から強いアドバイスが来ました。
1.飼料高騰の悪影響を最小限に抑えるために、基本に忠実に
2.品質基準を維持しながら、原料コストを最小限に抑える
3.飼料の無駄を省く、調整をカバー率50%未満、調整が容易でないフィーダーの修理か交換
4.どの段階でも過剰に給餌しないように、予算給餌フェーズフィーディングを見直す
5.妊娠中または空胎の母豚への過剰給餌を避け、早く低価値の豚を出荷
6.穀物の粒度を500~600ミクロンへ
7.有効性を証明する科学的な文書データのない飼料添加物を排除すべき
出典::KSU Purple Pig Magazine 2023年 6 月号
米国ポーク生産者協議会(NPB, Ames, IA USA提供)作成
「飼料高騰と高コストへの対応する実践アイデア集」Practical Ideas to Address High Feed and Production Costs
各章はA)飼料製造と使用法、B)飼料管理、C)飼料配合設計、D)豚の飼養管理、E)健康管理、F)マーケティングからなります。出典:https://library.pork.org/media/?mediaId=53DBDBB9-E037-4BBD-9CFDD9227529BBAD&viewType=grid
A)飼料製造と使用法面
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「もしまだ実施していないなら、まず飼料の粒度を細かくせよ」100ミクロン下げるごとに、飼料効率は0.12%改善されます。750ミクロンから600ミクロンにすべきです。この細かさなら、ほとんどの場合に胃潰瘍の問題はありません。ただし飼料ダストが増加します。
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「ペレットの質をあげよ」飼料粒度が細かくなると、廃棄飼料も増えます。そこで質の高いペレットで、飼料フィダーの中で、ペレット壊れているのを20%以下にすることで、飼料の使用割合と飼料効率を上げることができます。高品質のペレット飼料であれば、飼料ダストが減り、飼料廃棄が減り、飼料要求率が改善され、胃潰瘍発生率も低くできます。ただし、ペレット製造コストと、それによる実際の改善率を測定し、ペレット飼料の使用が経済的に見合うかどうかは常にチェックすべきです。
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「飼料製造機の最適使用のためのメンテナンスをせよ」ローラー粉砕機が飼料を正しい細かさで製造できているか、撹拌機が均等に原料を混ぜているかなどです。また、飼料の重量秤の調整は、最低でも1年に2回は行うべきです。
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「ウエット・ドライ式の飼料フィダーを使用せよ」ウエット・ドライ式は、飼料廃棄とダストを減らします。乾燥したマッシュ飼料より嗜好性も増しますので、飼料消費量が増え、肥育成績が改善されます。
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「穴のあいた飼料フィダーを修理か交換せよ」穴の開いたような飼料フィダーは、飼料廃棄を増やして飼料コストを増やし、不適切な飼料を供給することで成績が低下したりします。飼料廃棄を最小限にし、成績を上げることができるような最新型のフィダーと交換すべきです。
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「飼料フィダーの開口部を補正するのを日常業務にせよ」フィダー開口部の補正は、飼料廃棄を少なくします。飼料タンクと飼料運送ラインの微調整でも大きな節約ができます。
以下は米国カンサス州立大学(KSU)の推薦です。
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飼料フィダーに飼料を入れる前に、フィダーをよく清掃してから、完全にフィダーの開口部を閉じよ
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フィダー開口部を少し開けて、少し飼料がでるようにせよ
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少し揺らして、フィダー口の平盤部が3分の一隠れるくらいペレットやマッシュを出すようにせよ(KSU提供、左図はペレットと右図はマッシュ用参照、写真カードとしてKSUで販売)
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飼料の流れをよくしようとフィダーの開口部を開けるのでなく、毎日フィダーの隅をクリーンにせよ
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飼料運送ラインでの湿気による飼料ダメージを予防せよ
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ネズミや鳥や害獣の被害をなくしなさい
B)飼料管理面
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「飼料原料からのカビ毒コンタミを常にモニターせよ」カビ感染後のカビ毒生産は、植物成長・成熟・収穫・貯蔵中そして飼料製造中でも、湿度・温度と酸素があれば起こりえます。そして、穀物はダメージがあったり、未成熟であったりし、干ばつにあった場合にとくにカビ発生とその成長が起こりやすくなります。
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「飼料の予算給餌の徹底と最小コストの飼料設計を実施し、厳しくモニターせよ」。不確かな予算給餌は、効率を下げコストをあげます。例えば、不正確な体重測定による飼料、体重間違いで設計された飼料は、飼料効率を下げコストをあげます。経済的コストで設計された飼料は、成績を最適にして、飼料原料の原価を最低にできます。常に兼ね合いがあり重要なことは、コストへの飼料設計の大きな効果を意識しておくことは重要です。表1と2にカンサス州立大学の推薦する予算給餌(フィードバジェット)例を示します(下の表2つ)。なお季節と遺伝・種豚メーカーによって変化させるべきです。
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「フェーズ・フィーディングの再点検と性別給餌も検討せよ」すべての生産フェーズと体重と対応飼料の徹底した再検討をするべきです。各フェーズと体重のカテゴリーがあっているか、細かく点検するべきです。それは種豚メーカーと種豚ラインによって違えるべきです。種豚メーカーによる育種改良は毎年進んでいます。性別給餌もできるなら実施しましょう。フェーズ・フィーディングと性別給餌の実施は、生産効率を改善します。そして出荷前の飼料、とくに出荷前の肥育豚への高価な飼料による過剰な栄養分の給餌はやめ、安価な飼料を使用しましょう。
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「母豚別の栄養に注目せよ」違った産次グループ別での栄養を考慮することで、母豚の生涯成績も改善できます。例えば、若雌豚から2産次までの種豚には、授乳期での母体蓄積栄養分の過剰な代謝を予防するために、高いレベルのタンパク質とエネルギーが必要です。母豚の産次が増えてくると、生産成績を最大限にするために、微量成分(亜鉛、銅、鉄など)が大切な栄養素となります。飼料タンクや運送システムを増やすことで、違った母豚グループへのきめ細かい給餌をすることを考慮してください。
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「飼料切れをなくせ」農場内での飼料運送システムで頻繁に起こる飼料切れは、成長途中の肥育豚にとって、大きな悪影響(例、胃潰瘍、悪癖、攻撃行動の多発)があります。
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「飼料消費量のチェックを日常業務にせよ」母豚以外の個々の豚の飼料消費量の把握は困難ですが、ペン単位での飼料消費量を常時モニターすることで、飼料廃棄量、健康問題、飲用水の問題、換気問題などが迅速に把握できます。
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「飲水器と水は適切かを定期的にチェックせよ」水は必須の栄養素です。不適切な流速、水量不足、水の質の悪さは確実に豚の成績に影響し、死にいたらしめることもあります。飲水器は決められた量を適切な速さで出しているかチェックしましょう。とくに水源泉から最も遠い飲水器(水圧が一番弱くなる)をチェックしましょう。また過剰な水の使用は、糞尿の量を増やすので非効率となります。米国のPQAプラスでの推薦の必要水量と流速を下の表に示しました。なお暑い日には、もっと飲水量が増えます。飲水器の製造元にも必要水圧を確認しましょう。
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「出荷直前の肥育豚に対する適切な断餌を実施せよ」出荷時間が決まっている豚の最高12時間前からの断餌を検討するべきです。飼料の節約と実際の生体重を軽くでき、屠体の品質をあげれます。
C)飼料配合設計面
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「常に代替の飼料原料を探せ」米国での例は、パン副産物、グリセリン(バイオディーゼルの副産物)、ひまわり粕、カノーラ粕、コプラ粕(ココナッツ由来)、エンドウ豆、ルーピン豆、昆虫ミール、レムナ浮草、藻類、鶏油です。
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「合成アミノ酸を使え」米国ではリジン、メチオニン、トリプトファン、トレオニンの価格は、ある一定の大豆かす使用量の代替ができるまで下がってきています。飼料価格を大きく下げて、かつ嗜好性もよい飼料ができます。飼料原料の価格を常にチェックし、あわせて配合設計変更をすべきです。
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「スターター飼料から、伝統的な動物たんぱく質原料を減らせ」米国北ダコタ大学の研究では、高エネルギーのオーツ麦と硬質春小麦を主要穀物として使用すれば、動物たんぱく質源であるホエイ、濃縮大豆たんぱく、血清たんぱく質、血液ミールを減らせると報告しています。スターター飼料の配合は、利用できる原料とその経済性によるべきです。
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「配合設計をエネルギーベースから、エネルギーとアミノ酸の両方を考慮するものに変更せよ」歴史的にはタンパク質が最も高価な原料でしたが、穀物価格の上昇に伴い、エネルギーが飼料の中で高いものになってきました。エネルギーとアミノ酸比率を考慮した設計が大切になってきました。
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「飼料用抗生剤、酵素、酸性化剤その他の非栄養原料のコスパ(費用対効果)を見直せ」抗生剤の使用量と休薬期間は法令順守することが大切です。ある種の酵素は飼料の効率をあげるのに役立ちます。今使用している抗生剤や酵素や酸性化材は、自分の農場に適して、飼料効率を改善するのに役立っているか、常にコスパの評価をしましょう。
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「代替の油脂原料を常に探せ」飼料に油脂添加することの良さは証明されています。しかし、同じ成績または機能で、低いコストの油脂原料代替品はありえます。米国の例では、白色の豚脂、牛脂、鶏油、植物油、レストラン用豚脂などです。さらに代謝性エネルギーベースで油脂添加された飼料は、低い油脂添加量の飼料や代替油脂を使用したものより高価になります。
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「各飼料原料を正しく評価せよ」飼料原料の栄養と消化率値の分析は、日常業務にすることで、配合設計は正確になります。またいくつかの原料を1つの取引先から購入することで、原料分析と合わせて、飼料の一貫性の助けになります。飼料製造の標準作業手順を作成することで、飼料の質の一貫性ができます。
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「バイプロダクトであるDDGS(蒸留穀物粕)の使用を検討せよ」米国では、コーンを栽培している地区では、容易かつリーズナブルな価格で手に入ります。ただし、DDGSは平均でコーンの90%の栄養価でアミノ酸バランスも悪いので、配合設計には気を付ける必要があります。さらに後期の肥育豚用の飼料に使う場合は、屠体の品質が悪くなる可能性があります。アイオワ州立大学のスタイン博士は、妊娠期の母豚用を除いて、飼料の20%までと推薦しています。さらにミネソタ大学のペテグイリ博士は、DDGSを買う場合の以下の注意点をあげています。
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信頼関係がある製造業者から買いなさい
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薄い色のDDGSを買いなさい
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粗たんぱく質の最低2.6%のリジンを含んでいるDDGSを買いなさい
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シロップの玉が多いものはやめなさい
D)豚の飼養管理面
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「すべてのフェーズで豚の飼養密度を再評価せよ」適正飼養密度にすることで、肥育成績や行動への最小のインパクトで、最大の経済的増体ができます。肥育豚の出荷前の最終体重で、ペン当り豚の頭数を決めるべきです。右の表に米国Swine Care Handbookでの体重別の飼養密度を載せます。
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「体重90キロまでに選抜して、若雌豚で種豚用にならないものを選び出荷せよ」体重が増え、若雌豚の成長カーブが顕著に変わる前(1日当り増体が低下する前)に出荷してしまうことは、飼料効率を改善し、増体当りの高価な飼料の使用を減らせます。また早く出荷することで、外傷や死亡のリスクを減らせ、かつ出荷体重が理想体重より増えてしまう前に出荷できます。
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「死亡率と病気の発生率を減らせ」すべての生産ステージで、肥育豚や母豚の死亡は大きな損害です。最も損害の大きく、容易に防げる死亡を下げるべきです。妊娠母豚が死亡すれば、年間の母豚当り生産子豚数も下がってしまいます。また母豚が死ねばそれを若雌豚で更新するのに費用がかります。また体重の重い肥育豚の飼養管理とケアに注意を払うべきです。出荷前の肥育豚の死亡は、離乳前後の豚よりも損害が大きくなります。
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「室温を適切に維持せよ」それぞれのステージでの適切な室温を供給することは大切です。室温が寒すぎると、体温を維持するために豚は飼料を多量に食べ、飼料効率が低下します。右の表に適切温度の上限・下限を示しました。
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「環境ストレス因子に気をつけろ」飼育密度が高すぎる、空気の質が悪い(例、アンモニア濃度)、換気量が少ない、空気の流れが均等でない、高湿度や極端な室温などは、豚の成績に悪影響があります。
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「飼料の急激な変化に気をつけよ」不適切な飼料原料の使用や急激な飼料の変化は、肥育成績を下げたり、豚が飼料を食べなくなったりします。
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「飼育スタッフに動物の扱いの畜産技術を確実に与えよ」生産における人道的で効率的な動物の扱いは、生産効率を改善できます。人のポジティブで人道的な扱いで、豚の成績は改善することが研究でわかってきています。
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「飼育スタッフに正常と異常な動物行動についての訓練をせよ」外傷のある豚、非規則的に再発情の発生した母豚、繁殖異常を示す母豚の発生は大きな損害です。繁殖豚舎のスタッフは、これらの異常行動を見せる動物を発見できます。スタッフには、日常業務の観察で異常を発見できることを教えるべきです。これで避けれるコストを減らせます。
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「従業員の仕事量と責任を再評価せよ」労働生産性の改善はコストを減らし、作業の詳細まで評価することで、生産効率も改善できます。必要なサポートをして従業員を訓練し、教育し続けることは、働くモラルをあげ、農場に対する愛着心を増やすことができ、労働の成績と効率をあげます。
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「機械・器具をよく理解してその機械・器具の作業効率を上げよ」例えば、換気設備とヒーターが適切にセットされ効率的に動いているか確認する。換気ファンが正しく動いているか確認する。日常業務で、ファンを清掃するべきです。汚れているファンは効率が落ち、空気の動きが十分でないし、無駄なエネルギーを消費します。適切な機械・器具の使用は、労賃と修理費の節約で、投資に対する多くの見返りがあると思われます。
E)健康管理面
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「ワクチン接種実施プログラムの順守を確認せよ」農場での群健康管理プログラムの一環として、不必要または不正確なワクチン接種のコストは避けられます。ワクチン接種量不足のミスは、労働、ワクチン代、健康維持コストがかかる上に、メリット無しの大きな非効率を生み出します。連続注射器をチェックして、適正な量を打っているか確認しましょう。少なすぎるワクチン量は病気から豚を守ることはできませんが、多すぎるワクチン量はお金の浪費です。
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「早く病気を見つけ、迅速な対応をせよ」農場のペンにおける病気発生の発見の良い方法の一つは、日常業務での飼料消費量の測定です。多くの場合で、病気発生の一番目のサインは、豚が飼料を食べなくなることです。また周囲の農場でどんな病気があり、自農場でも起こりうることを知っておくべきです。母豚群の病気の初期サイン:飼料を食べなくなる、突然の流産、非規則的再発情などに注意しましょう。感染侵入の初期発見と対応は大切です。また、離乳舎や肥育舎での水使用量をメータでモニターするべきです。飲水量の減少は感染侵入のサインの可能性があります。
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「離乳舎と肥育舎の病気をコントロール・撲滅せよ」肥育舎での病気発生と死亡は、大きな損害をもたらします。群健康計画を通じての経済的に大きな病気のコントロールまたは撲滅は、豚の損耗と死亡を減らし経済的損害を減らします。ワクチン接種と投薬のプログラムを含む群健康プログラムを作り、以後改訂していくべきです。また病気になった豚出荷に伴う屠場での内臓廃棄などのコストも考慮すべきです。養豚専門獣医師と相談して、自農場にあった総合的包括的な群健康プログラムを作成してください。
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「タイムリーな安楽死を考慮せよ」治療後もよくならず、農場でもう死んでしまいそうな豚を安楽死させるのは、タイムリーとは呼べません。治療してもよくならず成長も著しく遅れている豚は、離乳舎でも肥育舎のどのペンでも取り除くべきです。
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「人道的な安楽死または、低体重用豚の市場への出荷を考えよ」標準作業手順ではどんな豚が別飼育され、そんな豚が安楽死させるのかを詳細に記述するべきです。また離乳豚では肥育豚舎に移動する前に判断すべきです。
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「運送による損耗や疲労困憊の豚を減らせ」米国は移動距離が長いので、運送による損耗や疲労困憊で動けない豚が発生します。日本では少ないので省略します。
F)マーケティング販売面
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「離乳豚の購入条件を明らかにせよ」離乳豚として購入した豚の健康状態、予想される肥育成績と屠体の品質を購入前に明らかにしておくことは大切です。
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「利益が最適になる販売体重を考慮せよ」体重が増え、成長カーブで飼料要求率が低くなる体重以上で販売するのでなく、多くの飼料コストをかけないように販売体重を考慮すべきです。肉がたくさんあればいいと思ってしまうのですが、米国では飼料コストが上がると、体重が増えて利益がなくなる体重ポイントが低くなります。利益が最適になる販売体重を考慮すべきです。それはパッカーと遺伝・種豚ラインによります。高価な飼料を追加するコストと、体重を重くした豚への付加価値とのバランスを考慮しましょう。
母豚死亡の機会コスト計算法
高飼料価格の中、母豚が死んだ場合のコストも上がってます。以下カナダのGenesis社の計算です。飼料費のみ50円/kgで、他は同社が使用した費用です。1ドル=100円。
母豚死亡率が5%のケースで、母豚2500頭農場で2000万円のロス、子豚当り280円のロスとなっています。日本だともっとコストは大きいと思われます。
英国流飼料こぼれ減少改善
英国農業開発委員会 (AHDB)からのアイデアで英国流の飼料廃棄を減らす法です。飼料要求率2.7を目標として、最も効果の高いのが飼料廃棄の減少です。飼料要求率0.5が改善可能というのです。生体120キロと仮定すれば、その飼料要求率0.5ですから60キロの飼料が、廃棄されているというのです。以下3つの分野で改善すべきです。
1)飼料の品質、飼料ラインでの固まった飼料は飼料給餌や豚の飼料消費を落とします。飼料フィダーや運送オーガでの飼料のつまり、ペレットの壊れなど定期的点検をすべし。
2)飼料貯蔵、飼料タンクを定期点検して、損傷や漏れをチェックせよ。飼料タンクは正しくかつ容易にわかるように飼料移動できているかをチェックせよ。また紙袋の飼料は、温度と湿気の高く痛むので、離乳舎や分娩舎には置かないように。飼料をチェックして、カビ発生や小虫がいないかチェックせよ。もし発生していたら、その原因場所を見つける、例えば飼料フィダーの中の飼料の固まりや不適切な貯蔵、すぐに改善するように行動せよ。
3)飼料のこぼれ、壊れている飼料フィダーは最高年間12トンの飼料を無駄にします。ペン床そしてスノコの下に落ちた飼料廃棄は、実にもったいない。飼料フィダー板状のものを敷きスノコ下に飼料が落ちないようにすることも1アイデアです。飼料こぼれの原因を見つけて修正せよ。例えば、豚のサイズに飼料フィダーのデザインが合っていない、飼育密度が多すぎて不均等な飼料給餌になっている、フィダーの飼料流れの修正、飼料フィーダーや飼料ラインに修理が必要などです。写真はAHDBのサイトから。引用はhttps://ahdb.org.uk/knowledge-library
妊娠豚の給餌量に注意
妊娠豚における給餌量は母豚のボディコンや生涯の繁殖成績に影響を与えるだけでなく、母豚群全体の給餌コストにも大きな影響を与えます。飼料原料の高騰により、給餌レベルの適切な管理はさらに重要になります。
表は、カナダ西部の15農場を対象に、同じ栄養コンサルタントが配合した同様の飼料を与えた場合の、妊娠母豚の給餌コストのばらつきを3 グループで示しています。3グループともに繁殖成績に違いがありません。つまり下位33%の農場群は、同様の成績で、上位33%群より1頭当り160キロで、キロ70円とすれば、11200円余分に使用しているわけです。つまり母豚当り1.1万円以上のコストがかかり余分のメリットはなかったというわけです。
妊娠中の給餌管理の目標は、母豚と成長中の子豚の両方の栄養需要を満たしながら、連続した分娩での体重増加をコントロールすることです。なお米国での推薦は産次ごとに、産次0-1で50-55 kg、産次1-2で45-50 kg、産次3-5で、35-40 kg の体重増加を推薦しています。