養豚アカデミー
Pig School for Professionals
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日本の養豚アカデミーとして産業界のプロフェッショナル達のための海外・国内の情報と独自コンテンツを持つウェブサイト
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中心8本柱:経営・繁殖・栄養・施設と設備・種豚と遺伝・健康・福祉・食の安全とSDGsの下に35コンテンツ
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スマホでは画面右上の黄緑色モバイルメニューをクリックすると8本柱とその下タブあわせて35分野が一覧できます
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子豚のような好奇心と行動力、そして成長力を目指しています。こぶたの学校長・纐纈雄三
実践繁殖学
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ルーエン獣医師の米国における高生産性母豚のための繁殖マネジメント
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ダイアル博士・カストロ博士・カンサス州立大学による母豚の能力を最大に引き出す繁殖マネジメント
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母豚の授乳期飼料のチャレンジ給与
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マーチンファミリー農場の動物ケアのマニュアル
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ハナファミリー社のノギスを使った母豚への飼料給餌法
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英国流の生後6時間以内の初乳を最大限に
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米国ポーク生産者協議会の標準生産手順(SOP)項目
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若雌豚保持割合を上げる10ステップ
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成長不良豚発生を防ぐために
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熱ストレスの見分け法と対応
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米国の豚生存率を上げる法、すべきことと無駄なこと
A. 米国における高生産性母豚のための繁殖マネジメント
以下は米国ポール・ルーエン獣医師 (Dr. Paul Ruen) の講演を中心に農場における繁殖管理についてまとめたものです。Paul Ruen獣医師は、米国ミネソタ州養豚地帯にあるフェアモント獣医クリニックの獣医師です。フェアモント獣医クリニックは養豚専門獣医師が7人所属し、担当農場は約30戸で約5万頭の母豚の指導をしています。フェアモント獣医クリニックは、生産者のために農場スタッフの雇用も担当しています。さらに精液生産のための種雄豚専門農場の関連会社に持っています。
はじめに
フェアモント獣医クリニックの獣医師は、以下の6つの原則を持って生産者の指導にあたっています。
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繁殖農場は肥育農場のためにある
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人材が大切である
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若雌種豚 (gilts)は農場の「未来」である
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交配は、独創的な方法ではおこなわない
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授乳期は期待するものが大きい
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健康 (health) + 種豚ライン(Genetics)はパッケージである
以下6つの原則について説明してゆきます。
「繁殖農場は肥育農場のためにある」
離乳後、離乳子豚の肥育成績が悪くなれば、それは繁殖農場の失敗です。養豚において生産コストの大部分(約75%、主に飼料コスト)は、肥育部門で発生します。さらに繁殖部門で起こった病気は、下流である肥育部門に流れてゆきます。例えば、離乳後に肥育部門に運ばれた豚の調子が悪いのは、その前の繁殖部門で管理に失敗していることが多いのです。農場チームとして繁殖部門は、肥育部門にとってよい肥育豚を生産するということを、目標とすることが大切です。
農場ではすべての肥育施設はウイーン・トゥ・フィニッシュ(離乳から肥育仕上げまでの一貫飼育)です。その場合に、最も影響のあるマネジメントは、オールイン・オールアウトの「実行」です。まずオールイン・オールアウトは、分娩室から始めるべきです。その時、違った分娩室間で、子豚を里子しないことです。そういうごまかしは、結果として肥育部門で、病気が増え、最も高く売れる肥育豚の頭数が減少し、そのグループの純利益も減少します。
フェアモント獣医クリニックの農場内での豚舎の数は、3つから50豚舎までと農場によって違うのですが、離乳時に肥育グループを作ります。そしてその肥育グループの利益が最大になるように、繁殖部門も肥育部門も協力しています。なお肥育豚の病気と肥育成績の関係を表1に示します。これらの病気を予防またはコントロールをするためには、分娩舎からのオールイン・オールアウトが最も有効です。オールイン・オールアウトによる農場の群健康管理ができない農場は今後の生き残りは難しいと思われます。

「人材が大切である」
人材が良い農場をつくるのです。よいリーダーシップなしでは、どのような素晴らしい計画も、とん挫してしまいます。とくに繁殖農場には、「よいマネージャー」が必要です。さらに優秀で安定して働いてくれる農場スタッフが必要です。私達の繁殖農場は繁殖雌豚1200頭から5000頭規模ですが、農場ごとに、優秀なスタッフが最低2人は不可欠です。優秀な農場スタッフとは、沈着で注意深く、豚を「よく飼える人」です。農場における人事管理については、「ティーチング法」と「命令法」があります。優秀な農場スタッフ育成のために、養豚の農場では以下のティーチング法が有効です。
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訓練や教育を重視する
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自分達の農場を今後どうするかという、将来への建設的議論を大切にする
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肥育農場を定期的に訪問しコミュニケーションを図る
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よい農場マネージャーになるよう育成しようする
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チームワークを重視する
その反対の「命令方」は、マニュアル至上主義、アメとムチ制度、書類主義、農場スタッフが上司を恐れるようになり、よいスタッフやマネージャーは育ちません。
養豚産業界に限らず、米国の最大の問題の一つが、従業員の離職率の高さです。表2になぜ離職したのか、そして従業員は何を望んでいるのかについて示します。給料以外のことでやめる人が多いこと、米国の従業員はチームワークの大切さ、仕事の意義の説明そして公平な評価に、働き甲斐を見出していることを示しています。
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「若雌種豚は農場の未来である」
米国における若雌豚の更新率は40から60%です。若雌豚または未経産豚は、農場の繁殖雌豚のなかで、最大を占めるグループです。現在は育種改良のスピードが速いので、若雌豚のほうが、古い母豚よりも潜在能力が高いのです。若雌豚の分娩時子豚生産能力は年0.2頭増加しているのです。
さらに私達のデータ分析からも、1産次に多数の子豚を分娩した母豚は、全産次で生涯成績がよいことわかっています。若雌種豚の育成は、管理上の重要ポイントです。以下に若雌種豚のステージごとに、繁殖マネジメントについて説明します。
若雌種豚の性成熟を促す
若雌種豚が交配できるようになるまで、ずいぶん時間がかかります。この期間の若雌種豚は、繁殖農場によってコントロールされるべきです。豚舎の床と密度、その環境、隔離・馴致のスケジュールおよび栄養が大切です。農場によるやり方の差が大きい部分です。
隔離・馴致は、スケジュールを組んで行うべきです。複数のサイトで隔離・馴致を行う場合と、1つのサイトで隔離・馴致を行う方法もあります。群健康管理として、若雌豚の繁殖群導入前の隔離・馴致は必須です。
若雌豚育成のためには、よい床面が大事です。床面は平床か部分スノコ床にすべきです。1豚房当たりの頭数は30頭までとすべきです。それ以下なら性成熟に悪い影響はありません。アンモニアガス(20 ppm以上)と暑さ(32℃)は、性成熟を遅らせます。糞尿の掃除と暑熱対策が必要です。私達の農場では、豚舎内の照明時間は、タイマーを使って、1日14から16時間にしています。
飼料給与は、交配するための栄養管理として考えるべきです。豚がエサを良く食べるから良し、としてはいけません。若い若雌豚にキツイ制限給与をしてはいけません。
ビタミンとしては、クロミウム、ビタミンE、葉酸、ビオチンも大切です。ミネラルとしては、カルシウムとリンです。
さらに十分に飼料が摂取できるためには、自由に水が飲める施設整備も大切です。例をあげると、各豚房(5頭分)にウオーターカップを1つ余分に取り付けました。そうすると、若雌種豚の飼料摂取量が20%増えました。さらに次の年の初産豚の平均分娩時生存子豚数が、前年より0.5頭増えました。水は重要な栄養素なのです。水を十分にあたえることが大切です。
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若雌種豚の交配前
性成熟のためのマネジメントが大切です。交配前の性成熟は、雄豚による発情誘起から始めるべきです。平均的には150日くらいから始めます。後述するように雄豚による発情誘起の質が大切です。発情発見の日付けは、豚ごと個別に記録すべきです。馴致とワクチン接種は、初交配前に終わっておく必要があります。飼料は制限をかけすぎないようしましょう。なお、ミネソタ大学リー博士は、農場導入までの体重管理で、1日当り増体量550g以下や800g以上はよくないとして、出生から導入までの成長率を1日当たり550-650gを目安にすることを推薦しています。
雄豚による発情誘起は非常に大切です。以下、若雌豚への雄豚による発情誘起のポイントです。施設セクションの「若雌豚育成ユニット:GDU」も参考にしてください。
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11か月齢以上の雄臭が強い豚を必ず使う
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1日1回20分以内にする
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雄豚は、若雌豚と必ず離して飼育する。雌豚が雄豚の臭いに慣れるのを防ぐため
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フェンス越しの接触より、若雌を豚房に入れての直接接触がよい
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若雌の豚房に雄豚を入れるより、雄豚房に若雌豚を入れるほうがよい
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フェンス越し接触の場合しかできない場合には、1回につき若雌豚5頭以内とする
上記の根拠としては、フェンス越し接触には、鼻と鼻の接触に限界があることと、雄豚との長時間の接触に、雌豚が雄臭に慣れてしまうからです。
ここで交配前の発情記録の重要性についての実例を紹介します。2農場が初発情から始めて、発情が来た日を記録しておくこと始めました。それらの農場では、交配はしないが発情がきた日を記録したのです。多くの養豚ソフトではHNS (交配しない発情発見) として記録できます。そうすることで若雌豚では、150-160日から初発情が来始めることがわかりました。そして正確な発情の記録があるので、発情3回目での交配実施が可能になりました。正確は発情記録を付ける仕組みをつくることで、つまり早いうちから個別管理をし、若雌豚が新しく移動した環境に慣れる時間もつくれました。そして、この記録を付けた母豚は、そうでない母豚に比べて、生涯にわたって分娩時総産子数などの分娩成績もよかったのです。
次に交配前の若雌豚の、ストール慣らしに関する実例を紹介します。ストールに慣れない若雌豚もいます。そこでストールに慣らすために、2回目の発情後から、ストールに入れるようにしました。それまでは交配してからストールに入れるようにしていたのです。「ストール慣らし」をすることで、発情チェックの雄豚や隣の雌豚、それに人にも慣れされることができました。
交配予定の1週間前から増し飼い(フラッシング)、つまり飽食させました。そうすることで、この農場は初産豚の受胎率が7%、分娩時生存産子数が1.3頭増えました。
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「交配は独創的な方法ではおこなわない」
若雌豚の場合は、まず体重と背脂肪とも十分に成熟していることが大切です。必ず雄豚は、交配しようとする若雌豚と離して飼育しておいてください。交配舎はよい換気状態で、清潔で乾いた床面であることが大切です。関係するスタッフ同士、さらに交配する人達と若雌豚の関係がよいことが大切です。グループを再編成しないようしてください。
交配で大切なことは、独創的なことをしないことです。雌豚、発情チェック用雄豚、交配者は同じ時間、同じ仕事を流れ作業のようにルーチンで行うことが大切です。実例をあげると、ある農場では、まず朝には、飲水器をチェックし飼料を給餌して、朝の早いうちに雄豚を使った発情チェックをしています。発情を見つけたら、印をつけて豚を少し休ませます。人も少し休みます。休憩後、人工授精です。ここは流れ作業です。人工授精時で大切なことは、「優しく、静かに、冷静に(gentle, quiet, calm)」です。そして人工授精が終わったら、豚グループの再編成をしたり、移動しないことが大切です。
次に離乳母豚の交配について述べます。離乳母豚は注意深く、分娩舎から動かします。私達の農場では、離乳母豚の交配前は飽食にしています。つまり経産豚のための増し飼い(母豚フラッシング)です。この時は授乳期の飼料を使用するのがベストです。雄豚での発情チェックは、1日1回としています。離乳母豚を混ぜるのは、ストール飼育でもペン飼育でも1回のみです。室内の照明時間は1日16時間以上としています。母豚の分娩カードも見えるところに置くことで、母豚の生産履歴情報がすぐわかります。この時期はストレスを避け、ワクチンも控えましょう。先述した流れ作業でルーチンを心掛けましょう。
交配(人工授精)の重要ポイント
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交配はルーチン(流れ作業)と知れ
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雌豚は朝に交配される生き物である
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我々の手をかけなくても、発情中の雌豚は雄豚に反応する
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適期を発見した時に、すぐ、または1時間後に人工授精せよ。
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雌豚の外陰部を常に清潔かつ乾燥させる
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人工授精中、雄豚をそばにおけ
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粘滑油は若雌豚には、いいかどうかわからない
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母豚に馬乗り、触るなどして刺激せよ
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忍耐だ
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授精後、5から10分後にカテーテルを抜く
人工授精については2人一組で、流れ作業でルーチンとしてで行うことを薦めます。ルーチンですが人工授精には、細心さも大切です。そして記録ソフトに交配イベントを正確に記録しましょう。
人工授精用の精液については、米国では雄豚専門農場で生産している場合が多くあります。精液の配送は、1週間に2度以上の頻度で、各農場に配達されるべきでしょう。なるべく必要な分だけ配達されるようにするべきです。常に精液の日齢に注意するべきです。なぜなら長時間持続性のある希釈液は使用してはいますが、作成後72時間以上を過ぎると、授精能力が落ち始めます。さらに農場で貯蔵されているものは、1日1回、回転されています。貯蔵温度は常に記録されています。貯蔵している室の環境にも気を付けるべきです。
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交配後妊娠の確定まで
交配後妊娠が確定されるまで、豚は動かさないようにしてください。授精卵が着床中だからです。交配後の飼料は2.5から3キロです。もしやせていれば、もう0.5キロ/日増やすといいでしょう。室内の照明時間は、交配時と同じで16時間にしましょう。豚を洗うのに高圧洗浄機は使わないようにしましょう。床を乾燥させ、母豚のための快適な空間を心がけましょう。ここでは1日一回の雄豚による発情チェックを行います。
妊娠30日齢から90日齢
リアルタイム超音波妊娠診断器で、妊娠の確認をしておくことが大切です。分娩予定の母豚数を補正することで、分娩子豚数が予測できます。
ボディコンデションスコア(1から5)で、スコア3を目指して飼料給与量を決める時です。飼料給与量は、2から3.5キロの間です。照明時間は16時間以上としましょう。ワクチンを打つべき時期です。
妊娠90日齢以降
妊娠豚への飼料給与量を、1日1キロ増やすときです。見た目の妊娠確認も忘れずに。偽妊娠の豚が見つかる場合があります。見た目でお腹の大きくなっていない母豚は、妊娠していないかもしれません。また四肢や蹄を始め身体のチェックも大切です。予定日の最低でも2日から4日前には、分娩舎に移動させましょう。
「授乳期は期待するものが大きい」
分娩室では母豚は室温21℃、子豚には38℃が目安です。分娩クレートや飲水器や飼料箱の修理など、設備や器具の確認をしておきましょう。湿度が高いと細菌が繁殖しやすいので、分娩室は清潔かつ乾燥させておきましょう。さらに分娩室の責任者は誰なのかも、はっきりさせておきましょう。
この時期は「期待するものが大きい」のです。まず授乳期の飼料摂取量を最大限にしましょう。米国では分娩後4日目までに、摂取できる最大量まで持っていくべきであると勧められています。自農場での授乳期飼料摂取量を把握する方法は、2つあります。1つ目は、1月の使用飼料量÷母豚の平均授乳日数で割りだす方法です。この方法は農場単位でしかわからず、大まかにしかわからないという欠点もありますが、簡易です。この方法で、私達の農場では、7と8月に授乳期飼料摂取量が、秋の20%以上落ち込むことがわかっています。さらに4月から6月も秋や冬より摂取量は約10%少なくなることがわかっています。2つ目は、個々の母豚ごとの毎日の飼料カードを付ける方法です。この方法は、母豚の飼料摂取量を個別で管理できるのですが、手間=コストがかかるという欠点があります。
私達の農場では、分娩後24時間以内に、初産豚でも経産豚でも乳頭数にあわせて、里子して哺乳開始頭数を増やすという方法も使っています。初産豚には、それで乳腺の発達を促すのです。里子にはそういう良さもあるのですが、里子を多くすれば、手間=人件費がかかります。さらに病気も、里子先のリッターに運んでしまうというリスクあることも覚えておきましょう。
大切なことは、里子は、分娩後24時間以内に、同じ分娩室のみで行うことです。弱い哺乳子豚を、後で分娩したリッターに里子をしないこと、流産子豚や死んだ豚をフィードバックしないことも、病気リスクを避けるために重要です。オールイン・オールアウトの「完全実行」が健康管理のため大切です。なお分娩舎室の管理は2人1組で行うほうが、母豚を動かすにも、子豚を捕まえるのも楽です。

その他に授乳期で大切なこと
授乳期間をできる限り伸ばすことです。私達の農場では、10年前の授乳期間は16日から18日でした。授乳期間を伸ばせば、平均飼料摂取量も上がります。さらに、総授乳期飼料摂取量を最大にするために、1日の飼料摂取量を分娩後4日までに、その時の母豚が食べることのできる最大量に持っていくように指導しています。飼料摂取量は、離乳後の繁殖成績に大きな影響を持っています。さらに授乳期の飼料は、高リジンで高カロリーにすべきです。私達はキロ3300 MEカロリーの飼料で、1日当たり60から65gのリジン摂取させるようにしています。
水の供給にニップルを使用している場合、初産豚には訓練が必要です。エサに水をかけるのもよいアイデアです。必要な治療は即、決断すべきです。分娩室は、病院の集中管理室のつもりで運営されるべきです。
「健康管理 + 種豚はパッケージ」
米国の農場では、PRRS、インフルエンザ、サーコ、マイコプラズマ、回腸炎およびサルモネラの問題があります。繁殖農場と肥育農場では、定期的な健康診断を行っています。自分の農場、どの病気が一番生産コストに影響を及ぼしているかを知ることが大切です。さらにバイオセキュリティの一部として、農場における豚密度を下げることも大切です。
若雌豚の導入に関しては、私達の農場では若雌豚の隔離・馴致法として、年間2から6群を30日齢から90日齢で外部から導入し、30日間隔離し、次の30日から60日で馴致しています。若雌豚の導入時と馴致終了時に、血液検査を行っています。
私達の農場ではPRRS陰性の若雌豚を導入しています。生産者の中には、自分の農場のPRRS株を血清を使ってそれらの豚に注射する人もいます。またはPRRS陰性のままで生産している農場もあります。回腸炎とサルモネラはワクチンで対応しています。インフルエンザは難しい問題になっています。健康問題に対応してくれる育種会社は大切です。さらに農場によっては、空気フィルターで感染の連鎖を防ごうとする農場もあります。
最後に、種豚の選択に関していえば、私達はポークの買い手を満足させなければなりません。長期的にみて、競争に勝てる養豚でなければなりません。私達の農場の最大の顧客は、米国ホーメル社です。そのためホーメル社が認めた雄豚ラインを使用しています。さらに私達の農場は、種豚会社と生産データを共有することでさらに、顧客を満足させる育種の改善を行っています。
まとめ
繁殖農場は肥育農場のためにあり、肥育農場のためには、群健康管理としてのオールイン・オールアウトの分娩室からの完全実施が大切です。母豚の生涯にわたって、よい繁殖成績を上げるには、若雌豚の育成から交配、妊娠そして分娩、離乳後交配まで一貫して考えることが大切です。交配法で独創的なことはしないことも大切です。養豚業には、なによりも人材の育成が大切なことを強調しておきます。
B. 母豚の潜在能力を最大に引き出す繁殖マネジメント
はじめに
ミネソタ大学のダイアル博士と南米の賢人カストロ博士の研究や経験、カンサス州立大学の豚栄養学グループ等の妊娠豚の経験や見解もまじえて繁殖群マネジメントに関する知見をまとめました。
繁殖豚のライフサイクル
母豚の重要なステージは、若雌豚として育成する時期、導入され繁殖雌豚として生産させる時期、そして淘汰する時期です。そして母豚の生涯生産性をいかに上げるかが生産者の重要な飼養マネジメントです。母豚の長期生存性と生涯生産性は正の関連性があります。つまり長期生存性のある豚を育成することが大切です。長期生存性への生産因子には、栄養、初回種付け日数、飼育密度と管理です。さらに群健康管理のために隔離・馴致も必須です。
主要な記録ソフトはイベントごとで記録するようになっていて、繁殖豚には8イベントがあります(図1)。8イベントとは、発情し交配・妊娠鑑定・分娩・離乳の流れ、そしてどの時点でも淘汰・死亡イベントがあります。さらに若雌豚の隔離・馴致のために、若雌豚保持―<馴致・隔離>―若雌豚使用可能の3イベントがあります。
なお主要ソフト (例、ピッグチャンプ)では<馴致・隔離>イベントは記録しません。<馴致・隔離>の日数は若雌豚保持と使用可能のイベントの間の日数になります。若雌豚使用可能イベントに記録される前までは、非生産日数が発生しないのが特徴です。こうすることで<馴致・隔離>中は非生産日数にカウントされなくなります。主要ソフトでの従来の定義では非生産日数は農場に導入日からカウントされるのでしたが、若雌豚保持と使用可能のイベントが新しく導入されることで、農場に導入しても<馴致・隔離>中は非生産日数が発生しなくなり、<馴致・隔離>を長期間しても農場の生産性が著しく低下することはないのです。
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カストロ博士の繁殖能力を最大限に引き出す若雌豚マネジメント
世界最優秀養豚家と言われた賢人カストロ博士が推奨する最強の若雌豚マネジメントを紹介します。カストロ博士はミネソタ大学で博士号を取得後、故国に帰り南米チリで母豚5,000頭を飼育し成功しました。当時ミネソタ大学のダイアル博士から世界一の優良養豚家と評価されました。人柄も良く、人を知り、豚を知る人です。彼は、人事・成熟雄豚の育成3段階の若雌豚プログラムを推奨しています(表1参照)。彼は若雌豚マネジメントの第一番目として人事管理を上げています。人事構成としては、農場マネージャー、農場スタッフ、チーフマネージャー、外部と内部の技術アドバイザーがあります。中でも、農場マネージャーを中心にチームを作るべきだとしています。人事を始めとして、成熟雄豚群の維持、そして若雌豚育成3段階プログラムを推奨しています。
参考として135日齢から雄豚による直接刺激を与えた場合の、若雌豚の初発情発見日齢の分布を示します(図2)。図で見ると個体間のバラツキが大きく、記録していないと雄豚刺激の効果は、はっきりとわからないのです。
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ダイアル博士の若雌豚マネジメント
元ミネソタ大学のダイアル博士の推奨するデータでのマネジメントも紹介します。若雌豚群管理のために生産データのなかで測定すべきものは以下です。
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初回交配日齢
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予算日齢を超えて種付けされた若雌豚%
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発情スキップして種付けされた若雌豚%
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発情スキップした日齢
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平均交配日齢
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群へ導入されてから交配までの日数
さらに、若雌豚プール中の総若雌数、雌豚中の未種付け若雌豚%、発情記録のある若雌豚数、若雌豚更新率%、若雌豚で初交配前の淘汰%、若雌豚からの繁殖群への選択率の測定も大切です。
若雌豚育成システムとしては、若雌育成舎、隔離・馴致舎、繁殖豚舎での若雌豚用スペース、若雌豚用妊娠ストール、発情誘起のための若雌特別舎(とくに夏場)が必要であるとしています。
繁殖能力を最大限に引き出す栄養管理
母豚の能力を最大限に引き出す管理におけるもう一つの中心は栄養管理です。以下に妊娠期と授乳期について簡単に述べます。
妊娠期の栄養管理
妊娠期の栄養管理にはまだ不明な点が多いのです。離乳時から種付け時までは、飽食させてもよいが、種付け後2日目までは飼料給与を増量してはならない、とする研究者など、きめ細かい飼料給与プログラムを推奨するグループもあります。一方、複雑な給餌法を避けるために、離乳時に太リ過ぎている、普通、やせ過ぎの母豚の3グループに分けて、種付け後3日以後から、1.8キロ、2.0キロ、2.2キロを一定して与えるというような給餌法を採用している米国の養豚会社もあります。
参考のためにきめ細かい給餌プログラムを推奨しているカンサス州立大学による妊娠豚の飼料給与の知見とポイントを表2に示しました。さらに同大学が推奨するきめ細かい妊娠期の給与法を図3に示しました。
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授乳期母豚の栄養管理
授乳期というのは、母豚にとって母乳を分泌し子豚を大きくしつつ、分娩という大イベントから繁殖システムの回復を図り、離乳後の発情回帰・排卵・受精・着床・妊娠維持の準備を確かなものにする期間です。母豚の身体そのものの維持、ミルクの生産、繁殖器官の回復、さらに初産豚は自分の身体も成長するための栄養分も必要です。そして授乳期に必要な栄養分に十分な飼料を摂取できる母豚は少ないため、母豚は自分の身体の脂肪とたん白質を代謝して使わざるを得ないのです。そしてその時、大きい養分プールとも言うべき母豚の代謝状態が変わり、そしてその代謝状態の影響で母豚の繁殖内分泌システムは変化します。授乳期にすでに繁殖内分泌システムは動いており、正常な離乳後の性周期・排卵のための準備をしています。そのため授乳期の栄養摂取量は離乳後の繁殖成績と強い関係があるのです。
衛生状態と飼養管理の改善で栄養摂取を最大限にし、母体の代謝状態を繁殖のために最適にして、泌乳量と離乳後の繁殖成績を改善できます。授乳中の飼料摂取量の増加は、授乳成績・離乳後繁殖成績にプラスに働きます。どの程度影響するか、単純計算で、平均飼料摂取量を1㎏増やした場合、離乳時の子豚総体重が1.1㎏増、平均離乳発情回帰日数が0.12日早くなります。さらに分娩率は2%、次回の産時分娩子豚数が0.01上昇します。いかに授乳期に飼料を食い込ませるかがポイントとなります。
飼料給与の目安とするため、米国30農場での1年間、25000頭分の収集データを示しました(表3)。1日当たりの飼料摂取量5.2㎏は全期間の平均であり、1週齢の平均は3.6㎏、2、3週齢は6.1㎏となっています。これを、上位10%、上位90%で見た場合、4.2~8.5㎏となります。
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授乳期飼料摂取量を増加させるためのポイント
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授乳期母豚の飼料摂取量を測定すること。
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新鮮な飼料と水の給与を心掛ける。
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室温と換気を母豚にとって適切にする。
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ドリップクーラーによる母豚の直接冷却など夏や春の暑いときの工夫をする。
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給餌回数とくに機械給餌器を使用しての夜間での給餌もよい方法である。
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起き上がりやすい床面にする。
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食べやすい給餌器、飲みやすい給水器を工夫する。
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妊娠期の飼料が過多にならないようにする。
C. 母豚への授乳期飼料のチャレンジ給与法
授乳期母豚への飼料パターンとは
授乳期母豚への飼料給与は、繁殖農場において最も大切な飼養管理の一つです。20年前ミネソタ大学院時代の私の研究テーマの一つが、「生産農場における授乳期母豚の飼料摂取パターンと繁殖成績の関連性」でした。なお最近のIoTの進展と多産系母豚の登場で、その時の研究がリバイバルで脚光を浴びていますので、ここに掲載しておきます。
図1に示すように、米国30農場の25000頭分の授乳期母豚カードから、6つの授乳期飼料摂取パターンに分けました。
タイプ1「急速増加型」
タイプ2の「大落ち込み型」:そして驚いたことに結構これが多いのです。分娩後の授乳期に急速に毎日の飼料給与を増加させていくと、授乳期の中期にドスンと食い込みが落ちてしまうのです。前のピーク時から1.8キロ/日の量が落ちた場合と定義しました。このタイプが3割ありました。タイプ2は「小落ち込み」でタイプ2でなく1でもないタイプです。
タイプ4「ゆっくり増加型」:タイプ2の「大落ち込み」を恐れて、ついタイプ4のゆっくりと給与量を増加させる生産者が多かったのです。
タイプ5の「ずーと低摂取量型」
そしてこのタイプ4とタイプ5の「ずーと低摂取量型」は、飼料摂取量が少ない豚が多いという問題がありました。授乳期の飼料摂取量が少ないと、離乳後の繁殖成績も悪かったのです。なお日本で調べたこの飼料摂取パターンの反復率は12%でした。なお飼料摂取量という言葉ですが、いくつかの農場では飼料の食べ残しを記録していなかったので、完全な摂取量ではありません。
当時1990年代は、米国ではSEWという早期離乳の飼育法が大流行していましたので、タイプ2の大落ち込みに注意しつつ、タイプ1の急速に増やす飼料給与方法を奨めました。当時の米国のSEWで授乳期間が14日から16日ぐらいだと、飼料を増やすための十分な時間がなかったので飼料摂取量が不足するからです。
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欧州優秀生産者の経験
欧州の養豚情報ホームページ「ピッグ333」(www.pig333.com)で、多産系母豚の授乳期母豚の飼料給与に関する興味深い記事を見つけたので、pig333本部に連絡をとり、英語を簡単に訳したものを掲載します。pig333本部と著者Albert Oliveras氏のご厚意に感謝します。なお著者Albert Oliveras氏は、2011から2014年までスペインの大手インテグレータ―であるBatalle社の養豚生産部門で働いた後、2015年から独立して自農場を母豚200頭で経営しています。2018年にスペインの優秀生産者して表彰されています。今回紹介する記事では、私の研究でのタイプ1をさらに進めて、もっとチャレンジすべきとして薦めています。母豚をボディコンと産次別でわけ、さらに母豚の食欲の潜在能力を見分けて、授乳期にできる限り多く飼料を摂取させようとしています。母豚を以下4タイプに分けています。
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とんでもなく食べる母豚
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まだ食べれる母豚
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飼料摂取量を落とさないように注意しなければならない母豚
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太ってしまう母豚
これらの4つのタイプに平均的な飼料給与はダメで、母豚ごとのきめ細かい管理と観察が必要です。さらに分娩直前から分娩当日までの飼料給与を減らしてはダメとしています。一人の生産者の経験ではありますが、日本の生産者にも十分応用できる部分があると思います。記事のまとめは以下です。
分娩舎における母豚への飼料給与には段階によって、以下に示すように4つ時期とそれぞれの目標があります(イメージ図2と3も参考にしてください)。
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