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  • 英国流農業リーダー育成ライフサイクル、1)募集し採用する、2)新人研修オンボーディング、3)人事、4)育成、5)その先へ

  • 英国流の標準作業手順(SOP)の作り方

  • 英国流の農業経営の長期計画のために自分を見直す

英国流の農業リーダー育成のライフサイクル

米国と同様に英国でも農業分野での人財育成は大きな問題となっているようです。

英国農業開発委員会(AHDB)がニュージーランド酪農業界の取組を応用した、農業リーダー育成プログラムを発表しています。農業リーダー育成ライフサイクル(Labour Life Cycle for Ag Leader)と言います。米国は農場文化として、「農場」という職場から見ているのですが、英国は「人材」から見ています。

詳しくは以下のサイト参照。https://ahdb.org.uk/labour-life-cycle-in-agriculture

https://ahdb.org.uk/agrileader

スタッフのライフサイクルを以下5ステージに分けます。

  • 募集し採用する(リクルート)

  • 新人研修オンボーディング

  • 人財活用のための人事

  • 人を育てる

  • その先へ

人事ライフサイクル

募集し採用する(リクルート)

選ばれる職場になる

 選ばれる職場とは、人々が働きたいと思うようなビジネスです。スタッフを大切にする人気の高い職場として知られていれば、求人市場で有利です。採用活動では、なぜあなたの農場で働くことがいいのか、以下の面でその理由を明確に示すことが重要です。

  • 明確な展望と価値観;あるべき姿の明確な展望を持ち、そこに到達するためのスタッフの重要性を示す

  • リーダーシップ;スタッフが楽しく働き、お互いを信頼し、尊敬し合えるような、ポジティブな職場環境を創り維持する

  • 人を育てる;スタッフがチームの一員として大切にされていると感じ、自分の役割を理解し、目標やキャリアを達成・成長するためにサポートを用意する

  • コミュニケーション;定期的で誠実な双方向のコミュニケーションを確立し、スタッフの言葉に耳を傾け、関わり、適切なフィードバック(意見応答)ができる職場にする

  • 褒賞・報酬;福利厚生パッケージを作成して、高いモチベーションの文化と従業員福祉を推進しましょう。スタッフへの日々の感謝の気持ちを表わしましょう

  • 働き方を明確に;明確なポリシーとマニュアルを設定し、スタッフをどのようにケアし、安全を確保し、何をすべきかを理解できるようにする

  • 競争相手・他業種への注意;労働市場における他業種の動向を把握し、常に一歩先を行くように。また、年金、給与、賠償責任保険などについても検討

「選ばれる職場になる」ための注意点

  • 展望はシンプルに書き出すことで、どのようなビジネスなのかを伝えましょう

  • 展望と価値観は、経営者とスタッフが、日々実行しているものを

  • リーダーシップは「コンタクト・スポーツ」であると心得ましょう

  • あなたのリーダーシップについて、人々が簡単に意見を言えるようにすること。そして自分の長所と短所をよりよく理解し、より効果的なリーダーとなれます

  • 仕事に期待することを人に伝えるとき、「何をしてほしいかWHAT」とともに「なぜその仕事が重要なのかWHY」を説明する。人は「なぜ」を知ることで、よりやる気が出ます

  • 人はそれぞれ違うし、学び方も違う、人を育てるには、さまざまな方法があると心得ましょう

  • コーチング(聞く、質問するなどの一連のスキルで、人をその望むコースに乗せる手助けをする)や人の指導のスキルを身につけることも、リーダーとして大切

  • よいコミュニケーションのためには具体的な質問をしましょう

  • 何が人を動かすのかを理解すると、より多くのものを得ることができます

  • 問題点やミスの指摘だけに神経を集中させないように注意しましょう。成功事例や農場でうまくいっている事例を話す時間を大切にしましょう。

  • 標準業務手順書およびマニュアルの作成にスタッフを参加させましょう。より当事者当事者意識を持ち、それらに従うことに責任を持つように なります

  • 農場でどのように行動すべきかを理解してもらうために、例えば、「チームワーク」や「素晴らしいコミュニケーション」とはどのようなものかを説明し、あなたのチームの実際の例を共有しましょう。

人事管理の運用

 人事方針と手続きは、スタッフを採用し、管理し、世話をする方法について、共通の理解を得るためのものです。明確な境界線を設定し、誤解を防ぎ、時間と費用を節約し、最終的にビジネスを保護するのに役立ちます。以下が含まれます。

  • パフォーマンス評価

  • 研修と教育

  • 社員募集と選択

  • 休日と勤務

  • 健康と安全

  • ハラスメントと苦情処理

 

募集広告の書き方

 募集広告の目的は、適切なスキルを持つ人々を引き付けることです。調査によると、広告を見る人がより正確に役割をわかることが望ましいのです。応募者はその役割に適していると思う場合にのみ応募するのです。

 

どのように募集するか

  • 友人や同僚や農場スタッフからの紹介(最も効果あり)

  • 応募者に直接アプローチする

  • 大学や専門学校や地元の学校またはクラブのニュースレター

  • 農業コンサルタントや農業関連人材紹介会社

  • ソーシャルメディア

 

募集での注意点

  • 競争の激しい雇用市場です。これは、あなたの広告に注意を引き、あなたの農場がどれだけよく組織化され、プロフェッショナルであるかを示す機会です。

  • 約束が守られないと、人は失望し、パフォーマンスの低下や定着率の低下につながるため、役割を過剰に宣伝しないよう注意してください。

  • 応募者からの問い合わせに迅速に対応しましょう。

 

仕事内容の説明

その仕事の主な責任と職務および期待をまとめたものです。英国では、新しい人材を採用する際に提供することが法的に義務付けられており、日常的な役割についてより具体的な内容が含むべきです。

  • 職務の目的

  • 職務の概要

  • その仕事は誰に報告するのか

  • 任務、課題、職務、責任分野

これは面接前に、応募者に仕事内容を理解してもらう必要があるからです。また応募者が本当にその仕事に適しているかどうかを自分で判断する機会を与えるという意味で重要です。仕事内容は、現在のスタッフにも対応されているべきです。

 

面接で重要なこと

 面接を2人以上で行うことは、異なる点を観察し、異なる役割を果たすことができるため、良い方法です。可能であれば、応募者の直属予定の上司が参加し、一貫性を保つために、すべての面接に同じ人が参加するべきです。

 

 面接の質問タイプには、「行動的質問」と「状況的質問」の2つがあります。

「行動的質問」は応募者に、特定の能力・スキルを実証した過去の事例を提示するよう求めます。これは過去の行動から、将来の行動を予測できることを仮定しています。

例:人間関係について心配になった状況を説明してください。なぜ心配になったのですか?それに対してどのような行動をとりましたか?

「状況的質問」は、応募者にある状況を与え、どのように進めるかを質問します。応募者の表明した意図や目標から、将来の職務遂行を予測できること仮定します。

例:どの母豚が発情しているか確認するように言われました。どのように発情期を判断するのでしょうか?どのように記録しますか?

面接での注意点

  • 面接者の行動と準備が、面接の雰囲気や、入社後の関係に影響を与えることを忘れないでください。最初からプロ意識を持ち、効果的にコミュニケーションをとることで、あなたが高い基準を持っていることを示し、新入社員が自らそれを実現する可能性を高めることができるのです。

  • 応募者が心地よく感じるように、まずはリラックスした一般的な会話から始めましょう。例えば、余暇に何をするのが好きか、どこに住んでいるかなどを尋ねるとよいでしょう。

  • メモを取り、自分の記憶に頼らないようにしましょう。

  • 用意した質問を忠実に聞きましょう。そうすることで、各応募者から必要な情報をすべて得ることができ、また、全員を同じ基準で比較することができます。何よりも、応募者に話させ、自ら質問する時間を与えましょう。応募者は、ここで働きたいかどうかを確認するためにも面接を受けていることも忘れないでください。

 

 面接の最後には、ここからの流れを応募者に伝えます。例えば、1週間以内に連絡することなどです。ただし、この時点では、決定したとはいわないことです。

 応募者が退出した後、他の面接チームと応募者のパフォーマンス、スキル、態度、経験について話し合い、それぞれの重要な基準についてスコア値とコメントの両方で採点しまとめます。

オリエンテーション

  良いオリエンテーションは、職場と従業員に関することを幅広く紹介、安全衛生に関する必須トレーニング、特定の業務に関する職域内研修(OJT)の初期段階、その他新入社員が仕事を始めるために必要な情報が含みます。6つのステップで新しいスタッフに最高のスタートを与え、チームを円滑に運営するための導入プロセスを構築してください。

新人導入プロセス6つのステップ

ステップ1:スタッフがスタートする前

  • 農場に関する有用な情報を送る

  • 初日に何をするのか、概要を説明する

  • 初日に行くべき場所と待ち合わせ場所を確認する

ステップ 2: 初日

  • 周囲を案内し、チームや他の同僚を紹介する

  • 自分の仕事の重要性、間接部門の人達と自分の上司と部下を知る

  • 健康と安全について説明し、スタッフ用ハンドブックを共有する

  • 一日の終わりに時間を取り、どのような研修だったか確認し、残りの週について説明し、不明な点があれば質問するように勧める

ステップ 3:最初の1週間

  • 最初の1週間の計画、誰が一緒に働くか、必要なものを得ているかどうかの確認

  • 仕事に関連する重要な標準作業手順やマニュアルを見せるが、あまりに詳細で圧倒するのは避ける

  • 最初の数週間から数ヶ月の間、正式と非公式な意見交換がいつ、どのように行われるのか、また試用期間中のプロセスについて説明

  • 自分の仕事がどのように行われるかを説明し、いくつかの仕事を試したり、質問したりする機会を与える。先輩スタッフのシャドーイング(見て真似をする)も検討する

ステップ4:最初の1か月

  • 1週間目の観察と意見交換に基づき、明確な期待値と成果値について話し合う

  • 仕事、農場の働き方、一緒に働く人々について学ぶための追加サポートやコーチングを確認する

  • 自信とスキルを身につけるために、意見交換する機会を定期的に設ける

ステップ5:3か月

  • 定期的にパフォーマンスを見直し、うまくいっている例と改善が必要な例を確認

  • 試用期間終了時に、十分な情報を得た上での判断ができるよう、進捗状況を記録

  • 改善すべき点については、明確な目標とタイムスケールに合意

  • 試用期間終了時に、進捗状況を確認するための機会を設定

ステップ6:6か月

  • パフォーマンス評価で得られた情報をもとに、正社員として継続雇用するか、公正に解雇するか、試用期間を延長するかを決定

  • 正社員として継続雇用する場合、期待されるパフォーマンスと目標に同意し、それらを継続的な評価のプロセスに移行

  • 導入プロセスがどの程度効果的であったかのフィードバックを収集し、導入プロセスの付加価値と今後の問題への対応を確認

人財活用のための管理

  効果的なコミュニケーションの方法と任せる方法、パフォーマンス評価・査定の方法、優秀な従業員を刺激し、動機づけし、褒賞を与え、農場チームに定着させる方法などです。また、物事がうまくいかないときに、どのように介入し、手助けをするかも大切です。

 優秀農場に共通するのは、人財として各人のパフォーマンスを一貫して管理していることです。多くの農場では、スタッフの意欲とパフォーマンスを向上させるために、スタッフの評価と査定と面談を行っています。そうすることで、スタッフが必要とするトレーニングや教材を確保することができ、スタッフと1対1の時間を持つ機会を提供することができます。また、パフォーマンス評価は、有能で昇進を目指せるスターになるスタッフを見つけるのに役立ち、ビジネスやプロセスの改善方法について有益な意見をえることができます。

パフォーマンス評価と年次査定

 パフォーマンス評価は、通常四半期ごとに行われます。年間を通じてどのような状況であったかを確認するためのチェックポイントとして、経営者とスタッフが共にパフォーマンスを振り返り、評価するものです。また、年度末に行われる査定への道筋をつけるものでもあります。

 年ごとのスタッフ査定は、スタッフのこれまでの成長を正式に評価するものであり、将来の能力開発を計画する機会でもあります。年1回の査定は、前回査定で得た目標が順調に進んでいるかどうかを確認するため、複数回のパフォーマンス評価でサポートします。評価の計画を進め、話し合いを記録し、活用する方法を学び、スタッフがそれぞれの役割で成長するのを支援します。

 評価前には、すでにスタッフと協力して目標を策定しておくべきでしょう。パフォーマンス評価・面談は、その目標がどのように達成されているか、あるいは達成されていないかを確認する機会です。

評価の実行と意見を言う(フィードバック)

  • 評価には、非公式なもの(例えば、農場の周りを歩いて会話をしたり、農場外で個人的に会話)と、正式なもの(四半期や年次の評価など)あり

  • 焦点を明確にする、例えば、特定の仕事、プロジェクト、特定の期間(先週、先月、四半期など)についての意見

  • 意見する時は「話す」のではなく「聞く」スタイルで行い、自分の意見を伝える前に、相手がどう考えているか知る

  • 意見を言いたい場合には、バランスをとるために、まずはうまくいったことについて話し合うとよい。ポジティブなことから始めると、相手は自信が持て、よりネガティブな意見を伝えやすくなる

  • 意見したい内容を裏付ける証拠、情報、事例があることを確認しておくこと

  • 評価・意見は常に「次の行動」につながるようにする。それには長所を伸ばすか、短所に対処するかのどちらであろうと

  • 合意した内容をメモし、進捗状況を確認する際に参照できるようにする

部下への意見の仕方

農場チームでのコミュニケーション7つの注意点

  • 時間を作る - 真摯に耳を傾け、自分達はできると感じられるようにする

  • 指示の際には、なぜそのようなことをしなければならないのかを説明し、正しく行うことの重要性を理解させること

  • チームメンバーが理解したことを確認するために、自由に答えれる質問をすることで、チームメンバーと対話をするようにする

  • 誰もが自分と同じではないことを忘れずに、相手の立場に立って物事を考えること

  • テクノロジーを使ってスタッフに情報を提供する

  • 色分け、農場内マップ、写真などの視覚的な合図で、何をどこですべきかを示す

  • お茶を飲みながらなど、相手に話す場を提供する

チーム・ミーティング(ブリーフィング)での事前の指示・打合せの仕方

より短いミーティングで、パフォーマンスの向上や日々の問題や課題に取り組むことに焦点を当てます。

  • ミーティングの目的、参加する意義などを出席者に伝える

  • 時間を守り、会議の予定を守る。誰かが関係のないことを話し始めたら、メモを書いてもらい、後日取り上げるようにする

  • ミーティングが「自分たちのもの」と感じられるように、何を話し合いたいかもスタッフに尋ねる

  • 全員が自分のアイデアや意見を述べる機会を持つようにする(チーム内の声の大きい人だけでなく)

  • 情報や数字を伝えるときは、それを読み取るために数分与えるなど、考える時間を与える

  • 「そのようなことはよくあることですか?」「そのようなことが二度と起こらないようにするにはどうしたらいいですか?」 など、参加者が考えて答えられるオープンな質問をして理解を確認する

  • 理解度を確認するために、行動について全員に話してもらう。忘れてしまうこともあるので、記録しておくとよい

  • 場所や場合に応じて、話すトピックと行動を黒板または紙に書く

  • 農場での特定の問題について話し合う場合、その問題が発生している場所の近くで会議を開催し、人々がそれを直接目にすることができるようにすることが有効な場合あり

チームに任せる

  任せることで、最も難しいのは、「手放す」ことを学ぶことです。小さなことをすべて自分でコントロールしようとするのをやめれば、チームの他のメンバーが向上し、より貢献できるようになるのです。また、自分自身もやるべきことに取り組む時間を取り戻し、仕事量のバランスをとり、負担を感じないようにすることができます。

スタッフのやる気、褒賞、定着

  農場で働く人たちの意欲・働き甲斐は何なのか、考えてみてください。これは、個人の性格、仕事のスタイル、あるいは世代的な背景によって異なるかもしれません。スタッフを農場の仕事に惹きつけるようにする。それがうまくいけば、自分の役割と農業ビジネスに献身し、熱意を持ったスタッフをチームで持つことができます。さらに、長期にわたって働いてくれる可能性が高くなります。

スタッフの意欲・やりがい・愛社精神・帰属意識を高める

  スタッフのモチベーションと幸福感を維持するための独自のエンゲージメント戦略を開発することが大切です。従業員の愛社精神(エンゲージメント)とは、農業経営における自分の役割にコミットし、熱意をもって取り組んでくれる人になってもらうことです。

愛社精神の高いスタッフは:自分の貢献が大きな意味を持つと考え、ビジネスを成功させるために時間や労力を惜しまず、生産性が向上し、事故の可能性が低くなり、雇用主との関係を維持する可能性が高く、そして農場の貴重な財産となる可能性が高くなります。

 

スタッフの愛社精神を上げるには?

  • 効果的なリーダーシップ

  • 農場と産業界で起こっていることについての効果的なコミュニケーション

  • 会社として達成しようとしていることへの信念

  • 明確な役割分担

  • 成長・発展、キャリアアップの機会

  • 経営者との定期的な対話

  • 同僚や上司との質の高い人間関係

  • 特別な努力をした場合の評価

  • 興味深く、意義のある仕事

  • 自律性と自分の仕事について決定する能力

  • ワーク・ライフ・バランス

 

その戦略アイデアは

  • スタッフミーティング。ミーティングは、重要な情報を伝え、現状を把握し、スタッフのアイデアを求め、前向きなチーム文化を育む

  • スタッフの労働時間を見直す。スタッフは平均して週に何時間働いているか?休日は何日ある?社員が自分の勤務時間をどのように活用しているか、ワーク・ライフ・バランスについて話し合う

  • パフォーマンス評価システムを導入する。スタッフが自分に期待されていること、そしてその期待に応えるために必要なスキル、知識、サポートを明確に理解できるようにする。例、継続的なコーチングとメンタリング、1対1の対話、評価ミーティング、査定など、すべてが有効(コーチングとは話を聞く、質問するなどの一連のスキルで、人をその望むコースに乗せる手助けをすること、一方、メンタリングとは、同じ分野で働くシニア経験者とペアを組み話すことで、知識と考え方を深めることです)

  • 研修と能力開発に投資する。コーチング、メンタリング、実地訓練(OJT)は、人材育成に最も効果的な方法です。経営者が自分の経験や見識を共有する時間を持ち、新入スタッフと話し合う。社外コースや正式な資格取得のための予算を確保する

  • スタッフを巻き込み、意見を求め、彼らのアイデアに耳を傾ける。スタッフの参加は、ポジティブな職場文化に不可欠

  • よく働いたスタッフを評価し、褒賞を与える

  • 仕事にもっと興味を持たせる。農場での毎日の仕事は退屈になりがちなので、できるだけ多様な仕事を提供する

  • 前向きなチーム文化を育む。仕事以外の社会的活動を企画する

現場ミーティング

低パフォーマンスの問題、苦情、不祥事

 どんなに努力しても、職場で計画通りに物事が進むとは限りません。従業員のパフォーマンスに重大な問題が発生した場合、早い段階で問題に対処すれば、多くの手間を省くことができ、その人が再び軌道に乗るようサポートすることができます。

採用や入社時から、高い基準の重要性を強調し、1対1の面談やパフォーマンス評価でそれを強化しましょう。職務と基準が明確であればあるほど、誰もが期待に応えやすくなり、また、自分の能力が不十分であることを認識しやすくなります。

低パフォーマンスの問題に気づいたら

  • すぐにそれについて本人と話す

  • 何がうまくいっていないのか、どうすれば改善されるのかを明確にする

  • 本人の意見を聞き、最初の話し合いが行動を変えるのに十分かどうか評価する

  • パフォーマンスを向上させるべき期日を決める

  • 研修またはコーチングを実施、または仲のいい人とチームを組むことも検討する

合意した期日までにパフォーマンスが改善されない場合、次のプロセスを開始する必要があります。

職場における苦情の管理

苦情処理手続きは、従業員が雇用主に対して問題や苦情を提起するための正式な方法であり、雇用主の責任は、それに耳を傾け、適切に対応することです。

不正行為

非行・不祥事など、あらゆる形態の不正行為があります。軽微な不正行為のよくある例は:

  • 遅刻

  • 不注意、過失

  • 不快な言葉の使用

  • 他人への無礼

  • 安全衛生に関する重大でない違反

これらの違反は通常、低レベルで処理され、問題が継続する場合にのみ懲戒の対象となります。

 

重大な不正行為

その行動が誰かに脅威や危険を感じさせる、またはその行為によってその人の信頼が大きく損なわれるような状況です。

  • 窃盗

  • 暴行、いじめ・ハラスメント

  • 安全衛生の重大な違反

  • 職場における薬物またはアルコールの使用

  • 財産や設備を故意に破損すること 

重大な違法行為は、懲戒手続きに直接つながるべきものです。

不正行為を調査する方法

 まず、実際に何が起こったのか、特に証言が食い違っている場合は、それを突き止める必要があります。これには、入手可能な物的証拠の確認、スタッフの直属マネージャー、目撃者、スタッフとの面談が含まれる可能性があります。スタッフと話す必要がある場合、その事件が不正行為に該当する可能性があること、およびスタッフの発言が懲戒手続きに関連する可能性があることを警告する必要があります。

時には、そのスタッフと静かに話すだけで、些細な出来事を二度と起こさないようにするのに十分な場合もあります。

 

ミーティングを設定する

 そのスタッフをミーティングに招待し、スタッフが自分の立場を説明できるようにします。従業員には以下のものを渡します。

  • 懸念事項の概要

  • 関連文書へのアクセス法

  • 回答準備のための時間

  • 支援者または法定代理人を同伴する機会

 状況の深刻さと、このプロセスで起こりうる結果を理解させる。ミーティングでは、スタッフに自分の考えを話してもらう。

 常にオープンマインドで耳を傾ける。スタッフが黙っていたり、参加を渋っている場合は、率直に質問をし、自分は話を聞くためにそこにいるのだということを強調する。会議中およびその後の会議では、関連するすべての会話を記録するために、徹底的にメモを取る。メモを取る人をもう一人来てもらうと、目の前のことに集中できます。

証拠を確認する

 ミーティング後、そのスタッフの説明を振り返り、対応を検討します。スタッフのコメントから、この問題にはまだ何かあると思われる場合は、さらに調査する必要があります。

 スタッフの行動が、状況を鑑みて軽微または重大な不正行為に該当するかどうか、そしてどのような行動を取るべきかを決定する必要があります。犯罪の性質、スタッフの説明、すべての関連情報(目撃者の報告、物的証拠、雇用環境、情状酌量など)、および代替手段として研修、指導、監督などを慎重に検討する必要があります。

 犯罪の実際の性質、周囲の状況、スタッフの説明を考慮します。深刻な違法行為と見なされるのは、経営者のそのスタッフに対する信頼と信用を損なわれた場合です。また、懲戒処分または是正措置を開始するためには、違法行為が発生したと真に信じる必要があります。これには、合理的な証拠があることが含まれます。

調査結果を伝える

 違反が深刻であればあるほど、あるいは起こりうる結果が深刻であればあるほど、必要な証明のレベルは高くなります。決断を下したら、スタッフと再び会い、決断の概要とその理由を説明します。

 深刻な状況や複雑な状況の場合、最終的な決断を下す前に、スタッフに仮の決断を伝え、スタッフにコメントをさせるとよいでしょう。雇用主は、決定を下す前に、従業員のコメントを純粋に考慮する必要があります。最後に、決定内容、その理由、予想される改善策と時間枠(該当する場合)、その他の関連情報を確認する手紙をスタッフに書きましょう。

 

懲戒処分

 いかなる懲戒処分も、状況を鑑みて公正かつ合理的である必要があります。これは、懲戒処分を行う真の業務上の理由があり、そのような措置が必要であると純粋かつ合理的に考え、その決定に到達し実施する際に公正なプロセスに従ったことを意味します。スタッフに対して懲戒処分を行う場合は、まず法律的なアドバイスを受けることが重要です。

人を育てる

 農場でよいチームを立ち上げ、スタッフが新しいスキルを身につけ、成長し続けるようサポートすることが大切です。継続的なトレーニングによって質の高い仕事ができるようになれば、スタッフはプロフェッショナルとして成長し、より長く働いてくれるようになります。継続的専門能力の開発が大切です。

 継続的専門能力開発(CPD)とは、スタッフのパフォーマンスを上げるために(あるいはキャリァ・アップするために)、常に新しいスキルを学び、開発するプロセスのことです。優れたCPDプログラムでは、その人の専門的な資格、実践的なスキル、知識が常に最新の状態に保たれ、進歩に応じて拡張されていくことを確認するものです。

 CPDは、スタッフの学習に対する体系的で実践的なアプローチであり、仕事の過程で得た新しいスキルや経験はすべて追跡調査され記録されます。スタッフのスキルと知識を向上させることは、企業が競争優位性を維持し、「選ばれる職場」になるために役立ちます。また、重要な人材を確保することにもつながります。なお英国には「ピッグプロPig Pro」という能力開発プログラムがあります。米国だと米国ポーク生産者会議の各種プログラムがあります。

経営者にとっての価値

  • 自分の農場のニーズに直結した、より集中的で費用対効果の高い研修、開発、学習を実現

  • スタッフの意欲・やりがいを向上させる継続的な啓発と学習の重要性を推進

  • スタッフのキャリアアップや昇進につながる潜在的な候補者を見つけるのに役立つ

  • 雇用主として「選ばれる農場」であることをアピールし、優秀な人材を確保する上で有利

 

スタッフにとっての価値

  • 農場ビジネスのための品質向上とコスト削減のために継続的な改善へのコミットメントを実証する

  • 自分の自己啓発の業績と、そのスキルや知識がビジネスにどのように役立つかをアピールできる

  • 柔軟性と適応性を発揮して、より効果的に変化を管理することができるようになる

  • 査定、パフォーマンス評価、給与アップに利用できる学習と改善の証拠となる

 

コーチングとメンタリング

 コーチングとメンタリングを活用することで、スタッフが自ら解決策を見出すような学習文化を創造することができます。どちらの方法も、直接に問題を解決することから一歩引いて、人を成長させる機会としてアプローチするのです。

コーチングとは、話を聞く、認める、質問する、修正するなどの一連のスキルで、対象者をその望むコースに乗せる手助けをします。

コーチング

  • スタッフが今、自分はどこにいて、どこに行きたいのかを明確にする

  • 思考、自己信頼、自信、理解、オーナーシップ、エンパワーメント、モチベーション、明瞭さ、集中力を高める

  • 行動し、説明責任をもち、実行に導く

 

メンタリング

あるスタッフが現在の知識、経験、考え方で限界を感じた時に、その状況を突破する理解・見通しを提供する方法です。同じ分野で働く、あるいは同じような経験を共有できる人とのパートナーシップから生まれます。

  • 強力な啓発ツールであり、自分自身の学習に力を与え、支援し、奨励するために使用される

  • 相互の信頼と尊敬に基づく

 

 コーチングする人をコーチといい、メンタリングをする人をメンターといいます。コーチとメンターの違いは、メンターは、自分の知識、スキル、経験を相談者と共有し、その人が能力開発し成長するのを手助けします。一方、コーチは、相手の目標を達成するためのガイダンスを提供し、その人が持つ可能性を最大限に引き出す手助けをします。

メンター(指導者)に必要なこと

  • 模範となる:模範を示して指導し、仕事の専門性と行動の両方において尊敬される。

  • 目的を明確にする:限られた時間のなかで、現実的で目的を達成でき結果がでるように、焦点と方向性を提供する

  • 影響するための学習する:人はそれぞれ違うことを理解し、何がその人の個性かを知るスキルを学び、その人が最高の自分になれるよう支援する

  • 建設的な意見を言う:建設的かつ客観的で、バランスのとれたフィードバックを提供しスキル、自信、信念の向上につながるようにする

  • 寄り添いかつチャレンジする:努力を促すチャレンジをして、その人の可能性を伸ばすタイミングを判断する。また、適切なレベルのサポートと励ましを提供する。

  • 進歩をモニターする:相談者の成長の旅に積極的に参加し、メンティの進歩に責任を持ち、成功には一貫性が必要なことを理解している

 

相談者に必要なこと

 

  • 学ぶ意欲がある:オープンマインドで、新しい異なる働き方を考える心の用意ができていること

  • 積極的に聞く:話す前に、耳を傾ける。口を挟まないようにする。自分の理解を確認するために質問をする

  • 行動する:物事が起こるのを待つのではなく、自己啓発とプロフェッショナルとしての成長を目指し主体的に行動を起こす

  • フィードバック(助言)を求める:フィードバックは、学び、改善するための機会としてとらえる 。良いメンターはフィードバックをくれますが、もしあなたがもっと 必要なら、遠慮なく質問してください。そしてフィードバックを個人攻撃と思わないこと。メンターはあなたの味方であり、あなたの成功はメンターの成功です

  • メンターの時間を尊重する:メンターにも自分の仕事があり、その時間は貴重なものです。直前になって会談予定を変更したり、メンターが24時間365日対応できることを期待しないこと

  • 終わるタイミングを知る:メンターとの関係から最大限のものを得ようと計画する、と同時にいつ終わるべきか、いつ自分の足で立つべきかをも知っておくべきです

コーチングの良さ

  • スタッフが自分のしていることについて考え、スキルと自信をつけ、失敗から学ぶのを助けることができます

  • コーチングは、誰かが仕事に取りかかる前、仕事中、または仕事を終えた後に使うことができます

以下にコーチングがスタッフの役に立つだけでなく、時間とお金の節約にもなる例をいくつか紹介します。

コーチング仕事前
コーチング仕事中
コーチング仕事終わりに

リーダーを育てる

 スタッフの中には、いずれは上級管理職や経営者としての役割に就きたいと考えている人もいることでしょう。農業界でより上級の役割を担うことを目的とした開発プログラムの最新情報を入手することで、彼らのキャリア上の目標を支援することができます。あらゆる分野のリーダーは、挑戦し、伸びるものです。スタッフは、初めてリーダーとしての役割を担う場合もあります。

リーダーシップの3つの分野

  • 自分自身をリードする – 成長志向を身につけ、困難から回復する力(しなやかさ、打たれ強さ、リジリエンス)を高める

  • 部下をリードする – 展望と目的を共有し、チームを鼓舞する(心に火をつける)

  • ビジネスをリードする - 前提・仮定・思い込みを疑い、ビジネスのチャンスを作る

リーダーシップの具体的行動は?

  • 成長志向のためには:変化をいとわない、挫折にへこたれない、困難を学習・成長する道とみる。                                            **その反対は:現状を維持しようとする、簡単にあきらめる、努力は実らないと考える、自分が知るべきことは知っているつもり

  • 回復力のためには:社会的適応性、恐れない、自分の力を磨く、優先順位をつける、人に任せる、再充電できる。                        **その反対は:内向き志向、恐怖心/恐れ、自分の苦境を他人のせいにする、こまかい管理、過度な長時間労働

  • 部下をリードするためには:展望・価値観を共有する、信頼される、多様性を受け入れる、共感できる、意見を交換できる。        **その反対は:閉塞感やマンネリを感じさせる、他人への信頼が薄い、他人は自分と同じように考えてくれると楽観している、常に批判だけ

  • 決断するために:戦略的にシンプル、リスクとメリットを評価、事実と意見を分ける、完全無欠な情報がないなかでも決断できる。**その反対は:情緒へ過度な依存、衝動的、常に先延ばし、過度に楽観的または悲観的

  • 起業家精神のために:情熱を燃やす、好奇心を育む、問題を解決に変える、リスクはとるがキャッシュは欠かさない。                  **その反対は:閉塞感を感じさせる、このままでいいと思わせる、判断を他人任せにする、収入と利益は固定されていると考えている

  • 細心さのために:重要点の質問者となる、標準と日常仕事を改善、盲点を見つける、良い習慣をつける。                                   **その反対は:問題点を受容してしっている、既存の基準やルーチンを守ろうとする、古い習慣や業績評価方法にこだわる

さらにその先へ

 農業ビジネスにおける長期計画を作成することが大切です。例、人材登用の方法、雇用計画と緊急時の計画、退職時の管理方法、事業の引継ぎ準備などです。

 現在のような大きな変化に対処する場合、農業ビジネスにおいて回復力をもつために適切な人材を確保することが非常に重要です。農業ビジネスに必要な役割、スキル、姿勢を探り、そのような特性を持つスタッフを採用し、維持するための戦略を持つことで、農業ビジネスの目標を達成するための強力な担い手を育てることができるのです。

スタッフの上級管理職への登用

昇進は、スタッフにより多くの責任を与え、さらに優れたパフォーマンスを発揮するよう報い、動機付ける方法です。これにより、生産性を向上させ、最も価値のあるスタッフ・後継者を確保することができます。

  • スタッフのパフォーマンスと向上心の向上

  • 仕事に対する意欲・やりがいと達成感の向上

  • 忠誠心を高め、優秀スタッフの定着を図る

  • 将来の経営陣を発掘する

スタッフが離職した際の教訓

  有能なスタッフが離職したとき、それを機会に、自分の農場がどのような職場なのか、既存および将来のスタッフのために何を改善すればよいのかを知ることができます。離職するスタッフと直接面談することもできますし、離職者インタビュー用紙に記入してもらうこともできます。質問の実例は以下です。

  • 他の仕事に就くなら、新しい職務は何ですか?その職務の魅力は何ですか?

  • この農場での仕事で一番楽しかったことは何ですか、またその理由は?そしてこの農場で働いていて一番嫌だったことは何ですか?

  • この農場での仕事は期待通りでしたか?予想外だったことは何ですか?

  • この農場の職場環境を改善するために、どのようなことを奨めますか?

  • 退職の理由はなんですか?

  • この農場で働くことを他の人に奨めますか?その理由を教えてください。

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