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前セクション1-4以外で重要な病気

感染症以外の豚の病気

結膜炎

SECTION V: 前セクションからの病気にはあてまらない重要な病気

狂犬病以外は家畜疾病図鑑に記載がないので、下線のあるものは、狂犬病以外は米国アイオワ州立大学のサイトを引用。狂犬病は家畜疾病図鑑。

Atresia ani: 肛門閉鎖症; 新生豚;原因不明;安楽死考慮。

Aural hematoma:耳血腫;全年齢;外傷から;当該豚の分離が推奨。

Congenital tremors:先天的震え症;同腹の一部または全部の新生豚、もし子豚が乳が吸えて、日齢があがると震えが少なくなり出荷まで育つ。100年以上前から知られている。子宮での何らかの感染(例、porcine pestivirus)が原因といわれている。震え症の発症とともに新生豚の脚弱も増える。

Conjunctivitis:若雌豚の結膜炎離乳後1 ~ 2 週間で現れ、発生割合は 5 から30%。 細菌の二次感染を促進するさまざまな一次因子または環境因子が関与。予備情報では、結膜炎の発症の因子は、若い雌豚、特定種豚ライン、環境、未確認の感染因子。

 治療:デナガード (3.5 mg/kg) および/または CTC (10 mg/kg) とアイブロシン (5 ~ 7 日間、体重 kg あたり 5 mg) を含む飼料または水の投薬で軽減はする。注射による治療効果は不明。1農場では、点眼スプレー (Vetericyn ピンクの点眼スプレー) で大幅な改善が報告された。

Cystitis and Pyelonephritis:膀胱炎と腎盂腎炎;尿路からの細菌感染、高産次の母豚で多い。死ぬ場合あり。血尿がある場合あり。飲水や排尿が十分でない場合になりやすい。

Dermatosis vegetans: 増殖性皮膚炎(仮称);先天的でランドレース種に多い誕生時または以後にでる。ほとんどの豚は6週齢内で死亡。生き残った豚は呼吸困難をもつ。

 

Ectopic ossification:腸間膜の転移性骨化(仮称);3才以上の種豚で多い、原因不明。

 

Epitheliogenesis imperfecta: 粘膜上皮不全(仮称);新生豚、先天的、4品種で多い。上皮の不全の部分が多い場合は流産するか、細菌感染で生後に死亡。

 

Gastric ulcer:胃潰瘍;8週齢以降の豚、胃の食道近くの場所(胃腺のない部)に発生。飼料消費量などは減らず無症状の場合が多く、屠場で発見されることが多い。貧血と黒い糞で気が付く。急性では死亡。雌豚より去勢豚に多い。

リスク因子:1) 飼料粒度(400μm未満)、2) ペレット、繊維の少ない飼料、3) ストレス(飼育密度、絶食、長い移動時間、豚群のミックス、少ない換気量)、4) 夏のヒートストレスで飼料摂取が低下した時、5) 飼料給餌が止まったイベント、6) 慢性の病気(サーコ、インフルエンザ、APP)、7) 成長促進のための銅含有(たぶん亜鉛不足)、8)ホエイやスキムミルクの不断給餌、9)小麦やコーンスターチの多い飼料、10)不飽和脂肪酸の多い飼料とビタミンEの不足。

 Control:効果ははっきりしないが、貧血の豚には、ビタミンKや造血剤の投与、隔離、サポート療法(タンパク質補助)がある。予防としては上記のリスク因子を変化させる。例、飼料給餌がとまらないようにする、飼料粒度を400μm以上にする、ペレットからマッシュにする。長期保存の飼料原料で、品質劣化やマイコトキシンを含むものがある。夏はヒートストレスを緩和する。他の病気(サーコ、インフルエンザA、アクチノバチルス胸膜炎)の抑制は胃潰瘍による死亡を減らす。 

 

Hemorrhagic bowel syndrome (HBS): 出血性腸症候群 (HBS, 仮称); 子豚期と肥育期の豚の突然死。死んだ豚は腹が膨れて、そう白。Control:リスク因子は:1)飼料給餌が止まったイベント、2)液餌、3)ホエイの給餌なので、これらの因子を取り除く。

 

Hernias:ヘルニア(陰嚢とへそ;米国ア); 子豚期と肥育期の豚、へそヘルニアと陰嚢ヘルニアがある。陰嚢ヘルニアは、遺伝的なものであるが、単一遺伝子でないと思われる。陰嚢ヘルニアは去勢時に発生、多くは左側。去勢時に見過ごされる。へそヘルニアは、両側に発症し、分娩時の不適切な臍帯の処置で起こりやすい。遺伝ではない。

 Control: 分娩時の臍帯の処置を、引きちぎるのでなくハサミで切断して止血と消毒。分娩舎の衛生状態を上げることは予防になる。陰嚢ヘルニアは手術は成功しやすいが、へそヘルニアの手術はあまり経済的でない。

 

Hydronephrosis:水腎症; 子豚期と肥育期の健康と思われた豚から、他の検査や屠場で発見される。

 

Hypogalactia and MMA: 泌乳不全とMMA(乳腺炎・子宮炎・乳生産無し); 分娩後3日以内に発生、泌乳の障害。原因が除かれれば母豚は回復するが、子豚は里子したり代用乳給与がなければ命が危ない。泌乳障害が主にみられるが、細菌感染からの乳腺炎、発熱、膣から膿をだしたり、腹臥、落ち着きなし、元気なしとなり、子豚への授乳拒否を起こす。

 Control:MMAはこの10年減少している。衛生的飼養管理の向上、すのこ床、乾燥した床など、衛生・飼養管理・施設によると言われている。リスク因子:1)新生豚が少ないまたは、豚が小さく弱く哺乳刺激が少ない、2)細菌性子宮炎と乳腺炎でエンドトキシンによるもの、3)配合設計のミスか給餌管理のミス、4)便秘、5)太りすぎ、6)カビ(麦角カビ)、7)分娩舎の非衛生。これらの因子を1つ1つ除いていく。とくに乳腺炎からの泌乳障害は、大腸菌からのエンドトキシンでの、催乳ホルモン・プロラクチンの抑制が多くの原因とされている。

Hypoglycemia:新生豚の低血糖症; 新生豚の突然死の原因の一つ。新生豚が飢餓状態、寒冷、限られた乳頭への競争、泌乳量が十分でない時、新生豚の貯蔵グリコーゲンはすぐなくなることによる。生後1週間以内の子豚にとって、寝る場所で35℃未満では子豚にとって寒冷となる。分娩時間が長かったときも起こりやすい。脚弱の新生豚の場合にも、母乳が飲めなくて起こりやすい。

 Control: もし寒冷で震えているようなら、ヒートランプなどの熱源のそばに即置くことが必要。もし子豚が、母豚から十分な乳が与えられてないなら、里子の実施または代用乳を与えるべき。欧州では代用乳の胃への直接注入も奨められている。母豚の泌乳不全や乳腺炎などMMAのサインがあれば、治療・処置も即行う。子豚が自分で飼料を消費できるようになるまでは、代用乳として、豚用の代用乳、牛の初乳、または豚乳を搾り同量の水で薄めて飲ませる。

Megacolon:巨大結腸症(仮称);直腸脱で肛門周囲を縫合した豚でみられる。結腸が拡張や弛緩して排便がゆっくりになる。

 

Mulberry heart disease and related conditions: マルベリー心臓病と関連病ビタミンEとセレニウム不足での心筋へのダメージ(非代償性心筋損傷)によるもので3つの重なる症候がある。1)よく見られるのがマルベリー心臓病、主に2-3週齢から2か月齢で、よく成長している子豚が急死する。時には呼吸困難や横になり、そう白なってから死亡する場合もある、剖検すると心膜水腫でフィブリン付着、心臓壊死と出血でマルベリーイチゴのように見える、ビタミンEの不足、ただしビタミンEが十分でも起こることがあり、他の酸化ストレスや抗酸化物質が関連していると示唆、2)栄養性の肝障害もある、子豚の急死あり、セレニウムの不足、米国ではセレニウムの飼料添加が0.3 ppmまであげられたことにより稀になっている、3)白筋症、背最長筋や大腿部の筋肉でよくみられる。3つともフリーラジカルと抗酸化作用の問題があると言われている。ビタミンEとセレニウムは代謝性の抗酸化作用がある。高濃度の多価不飽和脂肪酸や銅やビタミンAやカビ毒を多く含む飼料は、ビタミンEの効果を弱める。

  Control: 治療としてはビタミンEとセレニウムの注射。予防のために飼料への添加、妊娠後期の豚への注射。なおマルベリー心臓病はビタミンEの注射が良く効き、白筋症はセレニウムがよく効くと言われている。また、マルベリー心臓病はビタミンEが正常レベルの時にも発生し死亡が起こるが、ビタミンE注射で予防できる。集団発生した時は、飼料の品質検査、高い銅濃度や高い脂肪濃度、飼料貯蔵の状態をチェックし、飼料の品質に問題がないか検査する。不適切な飼料貯蔵、高濃度の銅レベルや脂肪レベル、不適切な構成分は飼料中のビタミンEを破壊する。なおビタミンE欠乏の小さい子豚は、貧血の予防のためのデキシトラン鉄剤注射時に、鉄中毒で死亡することがある。

Osteochondrosis:骨軟骨症; 軟骨形成異常ともいわれる。成長期の豚、出荷まじかの肥育豚や若雌種豚で四肢障害、特に四肢関節部で発生。はっきりした原因が不明。

 Control: リスク因子は成長期での急速な体重増加でかつ、遺伝的なもの、栄養欠乏、外傷を起こしやすい床と施設、関節での併感染や運動不足。治癒までの時間がかかることと治療への反応が遅いので、米国では淘汰されることが多い。

Pityriasis rosea:バラ色粃糠疹(仮称);4-12週齢で起こりやすい。1-10センチのバラ色のリングの盛り上がった発疹ができる。原因不明、4週間ほどで自然治癒。

Porcine stress syndrome: 豚ストレス症候群; 出荷肉豚で発生、豚高体温症や運送性筋肉萎縮病ともよばれる。遺伝に関連しストレスや興奮が引き金となって発生。麻酔薬ハロセンの吸入などでも引き金となる。屠場での発生はPSE: 薄い色 pale, 柔らかい soft and 液滲出exudativeの肉(日本ではムレ肉ともよばれる)。

 Control: 大手種豚会社では育種選抜で悪い遺伝を排除することに成功している。ハロセン遺伝子はPCRで発見できる。

 

Prolapses:直腸脱・膣脱・子宮脱;米国では骨盤器官脱(Pelvic organ prolapse: POP)とも呼ばれ出した。A)直腸脱は離乳豚以上で発生、腹圧が高くなって発生、激しいセキ、難産、B)膣脱は周産期で発生、C)子宮脱は周産期に発生、米国では増えている。痩せすぎの母豚や会陰部スコアが高いもの(突出している)はなりやすい。

 Control: 直腸脱は肛門周囲の袋状縫合、手術での切除で修復可能。明らかな原因は不明。引き金となったリスク因子に対処する。A)の直腸脱のリスク因子は、腹圧が高くなって発生(例、寒い時の温かい場所で豚の上に豚が乗る、トラック移動)、ひどいセキ、難産時の怒責や外傷、カビ毒(例:ゼアラノン)、下痢感染症(例:サルモネラ)、B)の膣脱のリスク因子は、噛まれた外傷、ひどいセキ、便秘による怒責、膀胱炎、膣炎、尿路障害、品種・種豚ライン、C)の子宮脱のリスク因子は、飼料中のエストロゲン様カビ毒、カルシウムとリン、ビタミン、母豚のボディコン、分娩時での多数の子豚数の排出、品種・種豚ライン。膣脱直腸脱は同時に起こりやすい。米国では子宮脱が増え、死亡率(安楽死)増加にも影響していると言われている。痩せている妊娠母豚には、分娩前には飼料を増やすことが推薦されている。

 予防(Dr. C. Johnston, 2023AASV):1)外陰部周辺に問題あるものは淘汰、2)分娩前に痩せすぎないように、3)便秘させないように、4)1日1回でなく、分娩前は分割して給餌、などが実践上いわれている。

Pustular dermatitis: 膿疱症(仮称);哺乳豚のみ発生、ある種の連鎖球菌の感染で発症し、膿胞は破れて自然治癒する。皮膚病へのサポート療法で早く治る。(米国ア)

 

Rabies:狂犬病;犬だけでなく哺乳類全部に感染、感染した動物に噛まれることで発生。臨床症状が現れると3-4日以内で死亡;法定;人畜共通。アイオワ州立大学HPも参考に(米国ア

Ringworm: 白癬; 全年齢で発症、主に母豚、首や耳の後ろ、初め小さいが5-10センチまで大きくなる。冬に多い。疥癬と鑑別要。長期間かかるが自然治癒する、サポート療法で早く治る。人に伝染する。(米国ア)

Shoulder ulcers in sows:母豚の肩潰瘍(仮称); 痩せていて固い床にいる母豚で発生。肩甲骨の周辺に発生しやすい。圧力がかかる部位の血行障害。

 Control:リスク因子は、やせている母豚、マット無しの床、横臥時間が長い豚、高い湿気、夏の水滴下式クーラー。予防は、母豚を痩せすぎにしない、下敷きゴム製マットを使用、分娩クレートのサイズを大きくして母豚が動きやすくする。(米国ア)

Skin necrosis of piglets:子豚の皮膚壊死;固い床材で飼育されている子豚で発生。膝など骨が触れる部位で、体重圧で発生、連鎖球菌などが分離。Control: 予防は床マットの使用や、床材を柔らかいものにすることや、衛生状態の改善。(米国ア)

Splayleg (spraddle-leg):新生豚の脚弱(仮称); 新生豚で後肢が側方へ伸びてかつ内転ができない、筋細繊維の発育不全。あるウイルスに子宮内で感染していると言われている。

 Control: リスク因子は、遺伝や低体重や床表面が滑りやすい、親豚のストレス症候群の関連遺伝子を持つもの、遺伝的ふるえを持つ新生豚。治療としては、専用テープで補強し1・2週間生きれば成長可能。

Sunburn and photosensitization日焼けと日光過敏症;日焼けは白系の豚の戸外飼育で見られる、主に哺乳豚や離乳豚。日光過敏症は、光線に反応する原因物質と光への暴露により起こる。光のある波長が、豚の過敏症のプロセスを刺激する、その原因物質例は牧場ではアルファルファ、クローバー、オーツ麦、裸麦、そば等がある。さらに薬品ではフェノチアジン、テトラサイクリン、サルファ剤などもある。

 Control: 直射日光を避ける。原因物質を突き止め排除する。

Torsion and volvulus:内臓捻転 (仮称); 腸の捻転や胃の捻転、全年齢に起こる、突然死、死んだ豚はそう白で腹部が膨れている。

 Control: 一つの原因で起こることは稀。引き金となったリスク因子を見つけ除くことが大切。リスク因子は、1日1回給餌で大量急速な飼料や水の摂取、飼育密度が高く豚に他の豚が乗る集団行動の下になった豚、飼料フィダーの数の不足からの豚間の飼料をめぐる競争、ガスが胃腸にたまるような発酵飼料の給餌、そして母豚の妊娠中・後期がある。とくに胃の捻転が母豚では多いようである。とくに1日1回給餌で給餌で、豚が興奮した場合にリスクが高い。回腸炎や豚赤痢との鑑別は必要。

Vestibular syndrome:内耳前庭症候群;子豚、頭を障害のある耳の方に右または左側に回るよう動く。細菌性髄膜炎から波及して発生。

Vices (tail biting; ear biting; flank biting; navel suckling): 悪癖 (尾かじり; 耳かじり; 横腹突っつきへそ吸い)悪癖と総称される。群飼の離乳豚・肥育豚で発生、死亡率高い、二次的細菌感染から死に至る、加害豚は見つけられる。

Control:制御のため2つのことを実施する。まず加害豚をみつけ隔離、被害豚は病室ペンに移動し治療(抗生剤と非ステロイド抗炎症剤)。次にリスク因子を1つ1つ丁寧に排除していく。リスク因子は、施設(フィダーや飲水器の不足、フィダー密飼育)、栄養管理(ミネラルや塩分のアンバランス、離乳直後の固形飼料への切り替え失敗)、環境(隙間風、ピットからの廃液、室温の大きい寒暖差、高湿気)、管理(多くのソース農場からの混合、飼料ラインのストップ)、非衛生、感染性の病気発生など多岐。具体例で飼料フィーダー口当りの離乳子豚頭数が7.5頭では、3.5頭に比して耳かじりが大幅に増えたと報告されている。健康ページの「尾かじり」も参考に。

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